芸術を探求【5】アートを感じるための美意識の起源に迫る

美意識

【アート チャレンジ5話】

 

アートを制作する意欲は美意識から生まれる

彫刻

アートを作るにあたって大事に思うことは、

その作る人にとって何が美しいのか、そしてその美意識を作品に投影することにもあるのではと思いました。

それぞれに違った個性があるので美意識も人それぞれに違った感覚があります。

 

その個人の美意識を最大限に高めて、アートと呼ばれる方法で表現することに尽きるのではと思います。

これは視覚的でもそうでなくても同じことです。

 

前回までの現代アートは西洋で生まれたルールの元で表現していくアートです。

現在では現代アートがアート界のヒエラルキーの頂上(おそらく)にありますが、

それだけが今後のアートではなく他の分野も十二分に価値のある表現がたくさんあります。

 

個人的には視覚的美と頭脳ゲームが両立している現代アートは最高で崇高なものに感じます。

私はまだ一部の頭脳ゲームしかわかっていないですが。

 

コントラスト

 

自分が持つ美意識が何なのかと考えたとき真っ先に出て来たのが、

形の凹凸による光と陰のコントラストに惹かれているということがありました。

例えば身近なものでいうと岩石の尖った凹凸面などもコントラストが美しいですね。

 

仕事で粘土彫刻を行なっている際にも、

リアリティを目指さなければいけない場面でもその意識が外れてしまうと、

勝手に陰影のコントラストが美しくなるように調整してしまい、

本物よりも少し違ったニュアンスになってしまったりすることがあります。

 

美意識は鍛えられると言いますが、

鍛えすぎると偏った美意識を使ってしまう場面もあるので注意も必要だなと感じています。

 

 

科学者の視点から美意識を学ぶ

落合陽一

そんなある日NewsPicksの動画コンテンツである「WEEKLY OCHIAI」に素晴らしい内容のものを発見しました。

動画タイトル「日本の美意識を語る」というものがあります。

 

その中でメディアアーティストの落合氏の美意識の一つに「わび・さび」というものがあるそうです。

言葉自体は知っていましたがわび・さびに対してここまで熱弁を振るうほど、

美意識を感じている人は初めてだったので感動してしまいました。

感動した内容を紹介したいのですが落合氏の意図とニュアンスが異なる場合もありますので視聴をお勧めします。

何より言語がハイレベルなので全て理解するには私にはまだ早い部分があるためです笑

 

落合氏の美意識の鍛え方は、美しいと感じたものをことあるごとに撮影していくことや、

美しいものを収集していくことにあると言われていました。

 

私も彫刻で美意識を感じる形を実際に作ってみたり、資料を集めたりすることで鍛えられている実感があります。

これは世の中で言われる「センス」というもので、センスは情報量であり、鍛えられるものであるということに繋がりますね。

学生時代に美術館にある名画の構図を大量に模写していったというエピソードもあり、

行動領域の広さに身震いしました・・・。

 

そして実はこちらが本題のさらに感動した話があります。

ゲストで登場している予防医学研究者・医学博士の石川善樹氏が考えた美意識の起源というプレゼンが特に目から鱗状態でありました。

 

石川氏は美意識とは、という前にその発祥起源から考えてみるという方向からアプローチして考察されていました。

そこには美意識の始まりはそれぞれの宗教による要因が大きかったのではと。

主にキリスト教、イスラム教、日本(神道、仏教)の3つに分けて解説されています。

私が解釈した内容でご紹介していきたいと思います。

気になった方は是非動画の方も見てみて下さい。

 

 

◉ キリスト教における美意識は「視覚」

美

教会や修道院などの建物の構造は光を上手く取り入れたデザインになっているという点。

光とは単に日差しだけではなく建築物の表面がフラットに近くそこにも光が反射して美しく見えるという点。

これは日本にある都会のビル群のデザインにも当てはまります。

落合氏はこれを「ツルテカ」と表現しています。

光との関係性においてもすごく分かりやすく的確な言葉ですよね。

光

 

そして西洋では星を観測する技術も発展したということ、これも光が関係しています。

ゆえにキリスト教の美意識は視覚的な美。

 

 

◉ イスラム教における美意識は「触覚」

美

イスラムの建築物の特徴は「風通し」に重点をおいた構造になってるそうです。

風通しによってもたらされることは肌に感じる心地よさ、つまり触覚で体感するということです。

アラビアンナイトの話は「確かに!」と共感するところがありますね。

他にも気候や衣装のデザインの流れにも風を感じさせるイメージもある気がします。

 

 

◉ 日本における美意識は「五感」

自然美

私たちは神社など神聖な場所に行ったとき、特に無宗教であったとしても、

説明が出来ないような神聖な感覚に包まれるのではないかと思います。

誰を祀ってあるのか理解していないままであっても神聖な雰囲気というのは肌身で感じますよね。

(育った環境によると思いますが)

石川氏はここで「かたじけない」という言葉で表現しています。

 

そこには日本特有の「察する」という文化があるのだと思っています。

これは日本人の性格の特徴としてもよく取り上げられますね。

この察する技術というのは論理や計算では分析出来ない領域で、ゆえに五感を活用して感じる部分だと思います。

まさに自然全てをそのまま受け入れて単純に楽しむということなんだと思います。

「わび・さび」という美意識の発祥もこれで頷けますよね。

 

結界というものがありますがこちらも似たような関係性があります。

(オリエンタルラジオ中田敦彦氏のお話より解釈)

西洋の結界は壁をドンと建ててしまって強制的に分断する形。

日本の結界は鳥居や狛犬であったりと物理的には出入りが出来るものです。

しかし日本人は察する文化がありますのでそんな結界であっても無闇に立ち入らない考えが働くといった感じです。

 

神社

 

そして察したその先には「おもてなし」というサービスに行き着いたのではと感じました。

 

このほかサイエンス的に見た話もあり本当に面白いプレゼンテーションでした。

合っているかどうかは別らしいのですが、

知識として覚えておくだけでも今後のために活用出来そうなハイレベルな考察でした。

いや、本当に凄い視点です。

 

普段見逃している自然の美を再確認する

美

芸術について探求していくとその先には「概念を楽しむ」という気付きもありました。

 

このことは素材、作り方、視覚的美、質量、テクノロジーなどで表現されていることに拘るのではなく、

そのアートが意味している目には見えない領域での、

「人間とは・・・」や、「この世界とは・・・」的な人間の持つ共感、気付き、感情のようなことを刺激してくれる価値観です。

 

ちょっとまだ現在の私では正確に言語化出来ていないので、

良い言語表現が出来るようになった時には書き直しておきたいと思います。

 

 

メディアアートの世界ですが落合氏の作品の解説はとても興味深く、

アートについて造詣が深まります。

落合氏の作品は自然という概念を楽しみアートに昇華させているのではと思っています。

WEEKLY OCHIAI「芸術をアップデートせよ」では自身の作品の解説をされていました。

言葉表現が難しい部分もあり、私が100%理解出来ているかはわかりませんが、

私なりに感動した落合氏の美意識をまとめてみたいと思います。

 

こちらサバの表面をテクノロジーで制作した作品です。

美

画像引用元

 

サバのこの表皮の模様がまさに「わび・さび」を感じると言われています。

この模様は進化の過程で得た生存するために必要だったものと考えられています。

背中の模様は波に擬態し、海の上からの敵から身を守ります。

お腹の光沢は太陽光に擬態し、海中の敵から身を守ります。 等。

長い年月を経て色々なものからの影響によって出来たもの、それは確かに美しいと感じますね。

そしてこのサバの真ん中を水平線にし、銀色を太陽、波を海とした一枚の「風景画」として捉えています。

最終的にはシンプルに「美しい」ものを切り取った作品になっていて、

そこにはまさに五感で感じる自然の美を捉えている落合さんの美意識が感じられました。

 

 

落合陽一氏の個展です。

落合陽一

メインは写真展ですが、立体作品もいくつかありました。

普段の日常風景に溶け込んでいる美を再発見出来る面白い個展内容でした。

写真

 

生命が途絶えた古木であっても美しさが残っていて、

その美を光の装置で可視化した作品だったかと思います。

アート

部屋のインテリアに欲しいですね。

アート

それにしても見たことの無い植物です。

アート

落合陽一 限定コーヒー。

苦味が強めの美味しいコーヒーでした。

コーヒー

 

美意識を磨くには

美

落合氏曰く、

好きなものをまずとことん集めることで自分の好きなものがさらに掘り下げられ、

美意識が磨かれると仰られていました。

このことは私も実際に体験してきています。

 

ある一定の目指す種類のものを片っ端から集め、

共通項を分析し抽出して、実際に制作へと取り入れていくというものです。

 

以前に彫刻テクニックの上達方法として書いた記事です。

彫刻

粘土彫刻が最短で身に付く模刻の効果!

2019年1月18日

 

これは初期段階にとても有効な上達方法だと思います。

石川氏の美意識の起源ももしかしたらそれぞれの共通項を分析して発見したのかもしれないですね。

 

 

 

そしてもう一つ私があまり意識していなかった方法も学ぶことが出来ました。

それは、

 

美しいと感じたものがあったとき、

それがどういう風に何故美しいのか細かく言語化する訓練をするということです。

 

なんとなくは言語化は出来ていますが、

落合氏の作品解説を聞いていると説得力の強度にまたさらに感動することが出来ます。

 

これは新たに身に付けるべき大事な圧力であると思いました。

ビジュアルに優先し過ぎず、見えないところにもさらに美意識力が注げそうな予感がしてきました。

 

長くなりましたが、今回学んだ美意識についてはこの辺りで!

 

前回の考察の旅。

アート

芸術を探求【4】アート における抽象的表現とは

2019年3月13日

 

それでは、良い造形ライフを! ーGoushiー

美意識

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です