芸術を探究【6】自分自身の興味を造形化してみる

造形

 

【アートチャレンジ6話】

前回の5話から一度実際にアート作品を作ってみようと思い制作に集中していました。

構想〜完成まで約3〜4ヶ月かけて制作していました。

 

完成直後はちょうど仕事場の引っ越しとレセプションでバタバタしていて、

最近ようやく環境が整い作品の撮影が無事終わりました。

 

1話はこちらから ↓↓↓

アート

芸術を探求【1】まずは現代アートから学んでみる

2019年2月18日

 

 

今まででアートとはどういったものなのかと探究してきましたが、

 

どの面から、もしくはどの立場から見るかによって答えは違うものになるので、

なかなかその様相を掴むのは難しいですね。

 

何も縛られない状況だとまさにどんなものでもアートになるような気がします。

もしくはルールのような一本筋を掴もうとすること自体意味のないことかもしれませんが。

 

 

しかしいろんなアートを見てきて、

私的にはいくつかの縛りがある中で表現されているものが良い作品として成立していると感じます。

 

 

そこで今回の制作では大きく3つの縛りを決めて制作します。

 

・外観の良さ

・他の作品との類似関係

・テーマや意志を読み取れる(内面)

 

これはあくまでも私自身の興味を追求した文脈に沿って設定しています。

なので確実に私が好きな要素が盛り込まれているアート作品になるはずなのです。

 

まず外観の良さとは、

何も考えずに見た時の印象の良さ飾って楽しめる装飾性です。

これは前回も書きましたが私が最も重要視する部分になります。

ただここが強すぎると技術面が目立ちすぎるので注意します。

 

他作品との類似関係とは、

すでに世に出ているスタイルの作品があるかないか出来るだけ調査します。

多くが被ってしまうと面白くないですからね。

この時代いろんなアイデアが出尽くしているのでその中でもまだ混ざり合っていない何かを探していきます。

ここの注意点としては画期的なアイデアすぎると得意分野である技術面の役割が減ってしまい

私の興味の文脈から外れてしまいます。

 

テーマや意志の読み取りとは、

これは1話から書いております現代アートの核になっている芸術史のコンテクスト(文脈)です。

今回は本来のコンテクストとは少々捉え方は違いますが、

現代アートのように「アートは見るだけではなく読むもの」という軸を元に制作しました。

 

この読むものというのは、現状この世界で唯一の考察という能力が備わっている人間に対しての作品だからです。

パスカルの「人間は考える葦である」という言葉はまさにシンプルで的確ですよね。

 

現代アートだけではないのかもしれませんが、

この読むという要素を入れることはアート作品作りにおいて必要不可欠なのかもしれません。

私自身も外観的な良さと内面的な良さがバランスよく両立している作品こそが興味を唆るアートです。

この辺りを目指しながら制作に取り組んでいきました。

 

 

それでは今回制作してみた作品のご紹介にいきたいと思います。

 

 

【 AGNI 】

 

造形アート

「 AGNI 」というタイトルを付けた抽象的造形アート。

W425 × H655 × D50 (mm)

 

造形アート

そして紅白2種類で対の作品に仕上げました。

素材は主に樹脂と木材を使用。

 

造形アート

 

アート作品

 

今回を機に作品用のサインロゴも制作。

このサインロゴも作品の雰囲気を盛り上げる一部の要素になっています。

アート

 

アート

 

 

この作品の解説を書いていきたいのですが、

色々な作品を見ていくと作者本人からはあまり作品の解説が無いものが多いです。

もしくはかなり抽象的な解説だけなものだったり。

アート作品は全てを明かさず見た人それぞれの観点で味わうというのが定説なのでしょうか。

 

映画などもそうでほとんどの場合伝えたい芯の部分がありますが、

それを読み解くことは難しい作品もあり、面白さの一つになっています。

ただ読み解きがいくつもあったり、捉え方で作者の意図ではない解釈になってしまったりするので、

そのような抽象的すぎる作品や映画はあまり好きではありませんでした。

作者が伝えたいメッセージのようなものを誰もが見てもある程度統一してわかることが私にとって重要でした。

 

しかし抽象的な作品をいざ作ってみて思いました。

いろんな人のそれぞれの人生の文脈で観た時の評価は、

自分自身には無かった思いもよらない捉え方だったのを知ったとき、

私自身に学びと成長があると同時に発見出来ていなかった面白さがありました。

 

アート作品

 

まだ出だしなので完璧に受け入れることは出来ていないのですが、

作品作りの楽しさがまた増えた気がしています。

 

このアートチャレンジでは一応学びながら制作していくので、

ある程度の解説はしておこうと思います。

その先にある芯の部分は皆さんの人生の文脈を通して感じてもらえたらと思います。

 

 

テーマの設定

 

陰陽

 

「AGNI」は対極性をテーマに選びました。

対極という言葉はいろんなものに当てはまりますが、

いろんな対極の中でこの作品では「火」というものを代表させて造形しています。

 

この火の造形は人類の発展の起源であるプロメテウスの火。

「火」の発見から人類は飛躍的に発展し現在でも生活する上では欠かせない存在です。

ただ使い方次第では破滅の存在でもあり、まさに諸刃の剣です。

 

さらに火のイメージは情熱のエネルギーであり、希望の光です。

しかしこちらもその熱狂が度を超えてしまうと己を壊し、さらには他の人をも襲う危険もあります。

 

爆発

 

と、外観から見て取れるイメージはこのようなもので。

そしてそれを抽象的に捉えると、

 

全てにおいてその場ごとにプラス事象とマイナス事象が同時に存在していて、

そのどちらかのバランスが崩れてしまうと支障ができ滞ってしまいます。

 

どんな物事でもプラス面マイナス面があるので、

それがどちらも良い悪いではなく同時に受け入れていくことで自然の流れを妨げず、

スムーズに進行していけるという哲学的な一つの方法のようなものをイメージして制作しました。

 

簡単ではありますがこれはまだ出だしの解説です。

この先は御観覧頂いた皆さん自身の文脈で捉えて、まさに「読んで」頂けると嬉しく思います。

 

脳

 

 

では次に造形のメイキングの一部をご紹介していきます。

 

 

「 AGNI 」メイキング

 

デザイン画

まずは構想を練ってテーマなどを決めた後、仕上がりのラフイメージを描きます。

最初から対極性の全ての意味を考えていたわけではありません。

 

この時外観的には絵画的な見た目と造形を組み合わせた作品にしたいということは決めていました。

なので火の造形と額のような枠の造形は統一して、背景のデザインを色々と描いてイメージを明確にしていきました。

 

 

造形

最初に制作したのが「火」の形を模した粘土造形です。

この時は枠の比率、火のデザインなど何度かトライ&エラーを繰り返し決定していきます。

一番印象に残る部分なのでバランス、コントラスト、流れには徹底して拘りました。

 

 

造形

型取りが終わって、樹脂で成形された2つの火の造形です。

ベースカラーを塗装した状態です。

色はこの後明るい色を重ねていきヤスリで磨いていくことで自然に出る色ムラで仕上げていきます。

 

 

アート

次は背景を制作します。

樹脂で何種類かの色を作りマーブリングしていきます。

よくアクリル絵具なので行う手法ですが、

樹脂を使用すると厚みと透明感が調整できるので、

実際に見ると奥行きのある天然石のような不思議な模様になります。

 

 

アート作品

アクリルと違って樹脂は油性なので、

樹脂自体に一工夫しないとなかなか良い状態で模様が留まってくれず、

何度かテストを繰り返しようやく形になりました。

 

 

アート

光の当たり具合で金色が光って綺麗に見えます。

 

 

 

彫刻

背景が完成したら背景の枠になる造形を作ります。

枠はパーツで全て分かれていて、それぞれに異なったマークを掘っていきます。

 

 

カタカムナ

枠に彫り込むデザインも試行錯誤。

 

 

レジン

必要なマークが全て揃い、ウレタンキャストレジンで成形した段階です。

これは土台となる木の角材にフィットするように作ってあります。

 

 

 

額縁

実際に木の角材ベースに装着です。

計算はしていますが、樹脂は硬化後少し変形があるのでぴったり合うか心配でしたが無事成功です。

 

 

 

立体ロゴ

篆書体で作った立体サインの原型です。

これはデジタル造形で作り切削機で製作。

 

 

ペイント

こちらも型から樹脂で成形して塗装です。

塗装はスプレーをたっぷり目に吹き少し弾くのを利用して模様をつけていきます。

こちらも最後はヤスリがけして模様の調整です。

 

あとはそれぞれを組み合わせて完成です。

 

造形アート

 

 

今回テーマが「対極」ということで造形を作っていく過程でも意識しながら制作していました。

火の形にはとことん拘り、全てのラインの流れはランダムではなく、

意味を込めた流れに彫刻しています。

 

背景の造形では自然の流れに身を任せて模様を作っています。

なので同じ模様が出来ないので一点モノとなります。

 

人工的に仕上げた細かく丁寧な造形と、

自然に出来るダイナミックな流れや模様の対極性を外観的にも表現してみました。

 

 

以前までの作品では正直内面的な要素が弱く、見た目の強度に寄っていました。

やはりキャラクターだけでは自分の思うものが難しいと思い、今回このような表現方法になりました。

 

そして今まで好きではなかった抽象的な作品の良さをいざ作ってみて体感しました。

ただ抽象作品を読み解くにはその作者のことも含めて歴史や業界の予備知識が必要で、

なかなか一般的には浸透しないだろうなと感じます。

 

彫刻

 

 

この「 AGNI 」もある程度の解説をしましたが、

私的に書いた内容から先に進んで解釈をしていくと、

さらに奥のメッセージを読み取って頂けると嬉しいです。

 

解釈は人それぞれなのでそこが難しいんですけどね笑

私もまだ抽象美術作品の意図が読み取れません。

 

炎

 

AGNIのヒントは、「対極の犠牲・感謝の意」。

いや、格好つけ過ぎて意味わからないですよね・・・、

 

それでは、良い造形ライフを! ーGoushiー

 

 

造形

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