【3】彫刻が上達する陰影テクニック3つのポイント

 

良い形を作るのに最も気を付けているところはありますか?

 

彫刻の場合選べないくらい気を付けることがたくさんあると思います。

その中でも私の場合は「光」「影」の濃さと形にこだわって制作しています。

 

光と影はどんなところでも存在していますよね。

写真撮影のテクニックでも光と影は必須です。上記の彫刻写真のように陰影の具合で作品の印象を決定付ける大きな要素です。

それぞれの形にある光と影をコントロール出来れば作品は劇的に良いものに変わります。

彫刻をする際でもシルエットや奥行き、細かい形などを作っていく時それぞれの形はもちろん大切なのですが、

距離を置いて対象を見た時の印象は光と影が特に目立つのではないでしょうか?

勿論シルエットや色もかなり重要な要素ですが対象の世界感、カッコ良さを認識しているのは形の陰影が大きな役割を占めているかと思います。

それでは、私が普段神経質なほど気を使っている光と影による3つのポイントをお話ししていきます。

 

1 陰影を見分ける

彫刻にリアリティがあると認識するポイントの一つに「稜線の数」というものがあります。

立体は面の組み合わせで出来ており、面と面の境界線にあたるのが稜線です。本来は山岳用語ですが、美術用語でもあります。

この稜線は形を作るのに最も重要な課題です。

 

稜線を見分けるポイントはそれぞれの面が変化するところには必ず陰影にも変化があるということです。

 

彫刻でリアリティを追求する時は存在しているものをよく観察します。

それを模刻して対象物の隣に並べ同じライティング下で見た時の陰影を確認します。

全く同じ陰影にするのは不可能に近いので可能な限り近づけます。

すると細かい造りが粗くても対象の印象やキャラクター、存在感など深みのある表現が出来ていきます。

 

始めたばかりの頃は特に稜線よりも細かいパーツに目がいってしまいがちになります。

彫刻は細かい作り込みも大事ですがその前の段階、大きな稜線をまず捉えていくことが大切です。

しかし稜線を見分けるにはそれなりの経験が必要になってきます。

 

そこで、

 

半面を分かりやすく稜線で表したポリゴンアナトミー胸像を作ってみました。(デジタルに見えますが実物です。)

やはりいきなり全ての稜線を追うのはハードルが高いので敢えて大きな稜線だけを残しています。

 

彫刻という分野は教科書のようなものがあまり無く、ほとんどよく観察しようということを重点に教わります。

ただこの「観察する」といっても形は見えてはいるけどどうして良いかわからないこともあるのではないでしょうか。

そんな時この胸像の参考書のようなものがあると「なるほど」と理解しやすく先に進むための取っ掛かりとなります。

 

 

2 陰影の形

彫刻の途中で何度か距離をおいて見てライティングを調整しそれぞれの陰影の形の確認作業を行います。

陰影の形が正確なほど、リアリティが増してくるということです。

と言っても陰影の形は複雑すぎるのでここでもまずは大きな陰影の形だけに絞って作っていくと分かりやすくなります。

 

例えば口元を見てみます。

陰影の一番濃い部分だけに集中していきます。

唇の上と下があると思いますが、その上下の重なりの陰影の形を注意深く観察します。

そうすると口の端から真ん中までの陰影の形が違うことに気付きます。

口端はまず太い陰影から始まりすぐに細く線状になり真ん中で大きな陰影になっています。

陰影の形の違いの多くは奥行きの深さにありますので、唇一つにとってもそれぞれの部分の奥行きを見ていくのがリアリティへと繋がっていきます。

 

3 陰影の濃さ

ヒトはものを見た時に対象の色が一番濃いところと薄いところにまず目がいくと思います。

色の濃さとはモノクロにしたときの一番黒いところと白いところです。

仮に遠く距離をおいてみると細かい形は見えずさらに色が濃いところと薄いところだけで見えます。

 

このことは彫刻するにおいて重要なポイントになってきます。

明暗がはっきりしているところはそのキャラクターの特徴であり第一印象を与える要因になるのです。

それに、作品の展示の仕方にもよるのですが基本的に近くから見ても遠くから見ても良いものに見えるようにしたいと思いますよね。

それが色の濃さに関係してきます。

 

彫刻は集中しすぎてしまうと作っているものとの見る距離が一定になりがちです。

なのでたびたび離れて、ある程度の距離からの陰影をチェックすることが大切です。

 

人の顔を印象付ける形とは

2018年5月23日

 

陰影の濃さはキャラクターを作る上でも非常に活用したいテクニックの一つです。

陰影を調節することで劇的にカッコよくなったり、美しくなったり、さらに可愛くすることも出来ます。

写真撮影のライティングテクニックと似たものがありますね。

そしてこのテクニックを知るにはどこにどれだけ陰影を付ければ良く見えるのかをリサーチするところから始めます。

良いと思った作品をたくさん観察しここでまた良く見える「陰影の共通点」を探していきます。

もちろんジャンル、方向性は統一して見ていきます。

 

良く見える陰影の共通点=陰影の成功法則です。

 

陰影のテクニックはすでに世界中で成立例がたくさん存在していますので見つけやすいと思います。

キャラクター性を出したいときには漫画やアメコミ等もとても参考になります。

 

模刻の場合もある程度形は合っているのに何かが違うといったことってよくあります。

そういう時もそれぞれの陰影の濃さ、陰影の形が合っているのかチェックしていくとおのずと正解に近づいていきます。

 

 

最後に、

いろいろなテクニックがあると思いますがどれもあまり考えすぎてしまうと行き詰ってしまいますよね。

そういうときは一度リフレッシュし、作っているものを直視せず少し離れたところから数秒づつ「見る」「逸らす」を繰り返してみると何か新しい気付きがあるかもしれません。

実はこういうことが大事なテクニックの一つだったりもします。 案外ふとした時にヒントが見えてくるのです。

 

【1】彫刻が上達するオリジナリティの話

2018年4月2日

【2】彫刻が上達する真似と共通の話

2018年4月7日

 

それでは! ーGoushiー