私は特殊メイク・特殊造形の業界で10年以上現在も 彫刻 を仕事の一部としています。 弊社運営のAmazing school JURというスペシャルエフェクトを学ぶ学校でも造形の講師として携わっています。
18歳の頃初めて粘土彫刻をスタートして数年、楽しく学んではいましたがなかなか思うように形が作れない時期がありました。
造形の分野で彫刻は細部までクオリティにこだわれる一番の技術なので仕事をする上では大事になってきます。
しかし彫刻技術はなかなか習得が難しく途中で諦めてしまったり、上達までに何年も費やしてしまったりとハードルが高いものです。
現在ではなんとか自分の思うような形はある程度作れるようになってきたと思っています。
そこで今まで培ってきた経験の中で彫刻が上達する方法、コツのようなものがいくつか確立してきました。
この記事では自身の経験に基づいて上達に必要だった事柄を紹介していこうと思います。
オリジナルデザインはまだ後にする

何か新しいことをスタートした時は誰でもまず自分のイメージの中にあるものを使って作り上げようとしてしまうのではないでしょうか?
例えば、自分の思う「カッコイイ」や「美しい」など今までの知識の範囲内で考えて最初は作ってしまいがちになります。
それに、今まで上手くいっている部分はこの先も通用すると思ってしまい疑わずにそのまま使い続ける知識もあると思います。
なかなか上手にならない原因の一つはこのようなことにあるのではないかと私は思っています。
技術を高めるためには今まで知らなかった、又は見逃していた新しい知識を中心に対象を捉えるということが大切です。
新しい知識というのは覚え始めはなかなか扱いづらいものです。
悪戦苦闘していると気が付いた時にはいつの間にかその知識を半減させて作業をしている状態になることがあります。
この扱いづらさというのも初期の頃は仕方のないものなので慣れるまでは努力が必要です。
ここでのオリジナルデザインとは見たことない新しい形からマイノリティなデザインまでのことを指します。
スタートしたばかりの頃は自分の思うように好きなデザイン(何かをモチーフにしても)を作ってしまい余計な個性が入りすぎることがあります。
料理で例えるなら、レシピを見ても全ての工程を手順通り行わず何割かは自分の感覚で進めてしまうような感じです。
個性というのは一人一人違うものを持っていますので個性を出せば出すほどオリジナルデザインに近づいていきます。
勿論以前の知識や個性が生きてくる場合もありますので一概には言えませんが、大抵の場合始めた頃の「良いと思い込んだこだわり」というのには注意が必要になります。
始めたばかりの頃の個性というのはまだまだ磨かれていないものなので安易に個性に執着し過ぎたり、個性に逃げに走ってしまったり、個性が出ていることにすら気づかなかったりするものです。

大切なことは常に目指している形にそのこだわりが本当に必要なものなのかを意識し続けながらしっかりと客観視し、潔く削ぎ落としていく勇気が必要になります。
自分のこだわりを削ぎ落とす作業は自分の何かが取られてしまう感じがして嫌な気分ですが、何度か繰り返すうちに本当にこだわる新しい部分が見えてきます。
そしてある程度の知識、技術ベースが出来上がってからようやく新しいもの「オリジナルデザイン」が生み出せる説得力のある段階へと進むことが出来ます。
かの有名なピカソも元々は写実的な絵から始まり、抽象表現の個性溢れる素晴らしい絵を次々と生み出していきました。

ピカソの時代背景も大きく関係はしていますがやはり個性的な表現を扱うにはそれなりのベースが無いと生まれなかったのではと感じています。
受注制作
仕事をする上ではオリジナリティの扱いは本当に気を付けなければいけません。
ほとんどの仕事がそうですが、特殊メイク・特殊造形の仕事も基本的に受注制作になります。
クライアントのイメージがありそれを私たちが形に変えていく作業です。
なのでオリジナリティを生み出そうと個性を出しすぎてしまうとなかなかOKが出なかったりします。
アーティスト気質な部分が高すぎると返って向いていない場合も出てきます。
クライアントの方向性をしっかりと共有し制作していく必要があります。
最後に、
個性を全て取り払うのは難しいものですが、作品を作っていく時その作品がどういう印象でどう感じてもらいたいのかを優先してデザインしてみるところから始めると良いかもしれません。
個性は人の数だけありそれぞれが大切なオリジナルです。
あとは使い所を見誤らなければ素晴らしいものを作り上げらることが出来ると考えております。
次回は「真似と共通点」という話です。
それでは! ーGoushiー