ヒトの顔を粘土彫刻していくには一朝一夕では難しい技術です。
ましてや完璧を求めるのであれば何十年もかけて徐々に洗練させていく世界でもあります。
今まで粘土彫刻で色々作りたい気持ちはあるけれどあまりにハードルが高すぎて断念してしまう人や、
現在も人の形の迷路に入っている人を数多く見てきています。
私は造形スクールの講師もやっている立場上、
粘土彫刻ビギナーの方にとってどんなアプローチ方法が人間の形を捉えやすいのかをいつも考えています。
シンプルな解決方法を言うと四六時中資料を見て頭の中にその形を常に存在させておき、
粘土で実際に作る作業を定期的に繰り返すことが一番良いのですが、
(量(数)をこなしながら質に変えていく方法)
ただこれはかなりマッチョなやり方なので特定の人しか難しいと思いますし、
ある程度までの上達ならばもう少し細マッチョな方法もあるのではと思います。
ゴリゴリマッチョで手に入れた技術が全ての正解では無く、
その人それぞれにあった習得方法があり、
そして目的の形に必要なレベルも様々だと思っています。
前提知識を分かり易く抽出して誕生した ポリヘドロンマン
どのレベルの細マッチョかは定かではありませんが一つのアプローチとして、
ヒトの形を形作るのに必要なポイントとなる形を抽出したヒューマンシェイプアトラスなるものを作ってみました。
その名も、、、
「ポリへドロンマン」
日本語では「多面体の男」です。
ではその姿をご紹介致します!
人間の顔を作る上で必ず意識しないといけない最低限の形で構成して制作してみました。
世の中いろんな技術が存在しますが、それをまず実践する前に最低限の前提知識を取り入れることで、
余計なステップを避けて段階を上がっていくことが出来ます。
粘土彫刻のような美術的な技術においてはその前提知識があまり広まっていないため習得するハードルがメンタル的にもかなり上がってしまっていると感じています。
なのでこの人間の顔を構成する最低限の基礎の形をまず知ることでよりスムーズにヒトの形を意識出来、目的の形を発見しやすくなると思っております。
ポリヘドロンマン 3つの見方
ヒトの顔を構成する前提知識とは、
◉全体の輪郭と各部パーツ(目、鼻、口…etc)の輪郭
◉各箇所の位置バランス
◉各箇所の奥行きの具合 ⬅︎ 特に大事!
粘土彫刻で大事なことは作る対象の形の角となるポイントを発見していくことにあります。
このポリヘドロンマンではヒトの形のポイントとなる角を分かりやすくして作っています。
勿論ヒトそれぞれで角位置の若干のズレはありますが、
基本的な位置にある角ポイントをまず知ることで作る対象の角ポイントも捉えやすくなります。
ポリヘドロンマンの用途は目標の作る顔と見比べながら、
その顔の角のポイントはどこなのかを探していく地図のようなものと思って捉えて下さい。
もしくはこのポリヘドロンマンを模刻していくことも効果的です。
(その場合角は多少緩やかにして作ると良いです。)
まず輪郭部分ですが、
例えば誰でも良いのですが一見滑らかに見えるヒトの頭部の輪郭でも全体を通して見ると必ず直線的な輪郭ラインと、
輪郭が盛り上がっている角のポイントを発見することが出来ると思います。
これは皮膚の下にある頭蓋骨の形が表面上に影響を与えているためです。
この直線ラインと盛り上がりの角ポイントがあることを知るというのが一つ目の見方になります。
次に各箇所のバランスとは、
例えば目と目の距離間であったりその目から口までの距離間であったりと、
2つ以上の箇所からそれぞれの形の基本位置を知っていくことから始まります。
特殊メイクや造形業界の人気のクリーチャー造形でも、
この位置バランスを崩して構成していくことで無限にデザインしていくことが出来ます。
この配置のバランスはいきなり立体で実践すると難しい場合もありますので、
その場合は平面の絵で練習して良いバランスを覚えてからでも効果的です。
実際絵を書くことで得られる技術で大きいのはこの配置バランスのコントロールにあります。
そして最後に私が最も重要視している部分、奥行きです。
立体を作っているわけなので奥行きの理解は当然に大事になってくるわけなのです。
しかし、普段何気に見ている奥行きの情報というものはすごく曖昧で、
その場所の明暗や角度、さらには思い込みであったりいろんな状況によって見え方が変わってしまいます。
実際に人間の立体を捉える機能は完璧ではないので、
極端ではありますが常に錯覚が起きていないか疑う必要があります。
ヒトの顔を彫刻していくとき、資料にする目標は平面のものや動画などの画面上の平面なことが多いかと思います。
やはり立体を捉えるには実際に立体として見ることが一番であり、
いろんな角度からの情報を手に入れないと目標の正しい奥行き具合は掴めません。
最初は顔の立体がわかりやすい見本を選ぶことが大事である
ヒトにはいろんな人種がいてさらに同じ人種間でもそのヒトそれぞれの細かい形の差もあります。
その中でもヨーロピアンやアメリカンなどの白人系の顔立ちはヒトの粘土彫刻学習に効果的です。
ちなみにアジアン系はビギナー彫刻にはハードルが高いのであまりお勧めしません。
アフリカン系も形が綺麗なので分かりやすいのですが、
造形界ではよくヒト型の造形やクリーチャーなどのキャラクターは白人系をベースにしていることが多く、
(特殊造形の発祥元又は繁栄地がそうであるため)
それは白人系の顔はそれぞれの形の凹凸がわかりやすいのでビギナーの方にはいつもお勧めしております。
(人種間の形の違いをまとめた記事も作成を予定しております。)
そして今回制作したポリヘドロンマンもそうした経緯があり白人系の形を模しています。
実際にヨーロピアンの顔型(ライフマスク)を見ながら参考にデザインしています。
以前に制作した「ドクロ 」という頭蓋骨模型も同じ理由であります。
本当は等身大で見ることが一番分かり易いのですが、
そうなると価格も上がってしまうのと制作日数がかかり過ぎてしまうので、
今回は見辛くもなく手頃なサイズ感で作りました。
ポリヘドロンマンは粘土彫刻のお供としても効果的ですが、
単純にインテリアアートとしても見て頂けると嬉しく思います。
ポリヘドロンマンの購入先はこちらからになります。
「Goushi Arts 造形グッズ回廊」
彫刻や造形、美術が好きな方、気に入って頂けたら私の造形ライフの本望でございます!
では最後にポリヘドロンマンのメイキングをご紹介して終わりたいと思います。
(ここから先は旧verのポリヘドロンマンの情報となります。)
メイキング オブ ポリヘドロンマン胸像
今回の彫刻はZbrushを使用してのデジタル原型で行いました。
以前⬇︎⬇︎⬇︎にも似たような粘土彫刻を作っているのですが、この面取り・・・手作業ではなかなか大変なのです。
そして完成後3Dプリントです。
今回は光造形というタイプのプリント技術で、
お値段は高価ですが表面にあまり積層段差の無い状態で作ることが出来るプリント方法です。
サポート材というのですが、建物の足場が組んであるかのようですよね・・・、迫力があります(笑
サイズ制限があったので2パーツに分けて出力。
サポート材を除去した後は合体する作業です。
ニッパーでバリバリカットしていきます。
プラモデルに付いている枠?と似たようなものです。
くっ付いている先端は細くなっているので表面処理もしやすいです。
さらにヤスリがけもしやすくなかなか魅力的な素材でした。
量産に耐えられるようにしっかりした型を作っていきます。
前面の型取りの続きです。
顔面には細かい形が多いので顔を上向きに寝かせてシリコーンを注いでいきます。前後での総量は約2.5キロです。
この次は無垢になるのを防ぎたいので、成形用の内側の型を作っていきます。 pic.twitter.com/MLHffB1eME— ◉剛士 Goushi / 特殊造形人👽 (@ukita_t) February 9, 2020
ポリへドロンマン誕生の瞬間👽
第一期は8人兄弟です👽👽👽👽👽👽👽👽 pic.twitter.com/LXypzVR2xo
— ◉剛士 Goushi / 特殊造形人👽 (@ukita_t) February 24, 2020
造形道具の一つとして、もしくは暮らしに彩を与える飾りとしてもご活用頂けると嬉しいです。
それでは、より良い造形ライフを! ーGoushiー
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