ここ何年かでコスプレイヤーというポジションがどんどん確立され、造形 業界にも良い影響を与えて頂いております。
コスプレイヤーの中には専門的に 造形 職ではなく独学でコスプレ衣装を作るという方もおられますね。
造形 を専門でやっている私からするとその情熱にはとても感動してしまいます。
ものづくりの上達はこのような情熱の精神が一番の近道と感じますね。
コスプレ衣装は特殊造形の仕事とも繋がっており、日本では近年需要が高い分野の一つになっています。
アニメ大国という日本に感謝です。
私の所属する自由廊ではこのコスプレ的な衣装のことを、
「特殊衣装」
と呼んでいます。
もちろんコスプレ衣装全般のことではなく、
衣装生地の縫製やデザインと、立体的な造形パーツを組み合わせた衣装のことを総称しています。
自由廊では造形パーツの方が割合は多いですが。
こちらはゲームショー用に制作した特殊衣装です。
これは見ての通りほとんどの部分が 造形 パーツで組み上げられていますね。
特殊衣装の 造形 パーツの作り方には統一されたものはなく基本的に、
使えそうなあらゆる素材を工夫して目的の形に作り上げていくという工作技術になります。
もちろん、特殊造形の工程でもある粘土彫刻や型取りなども目的によっては取り入れて造形 していくこともあります。
特撮ヒーローのコスチュームなども 造形 よりではありますが、特殊衣装の技術も組み合わさっていますね。
そんな特殊衣装でよく使用する素材を一部紹介していきたいと思います。
弾性のある素材を使うことにより、演者が造形物を扱いやすいものにする
まずは一番よく使用されている弾性を特徴とした素材です。
◉ウレタンフォーム
◉サンペルカ、フォームエース、PE等（ポリエチレンフォーム）
◉コーヨーソフトボード、リアラボード（旧ライオンボード）
主にこの３種類があればある程度の立体を作ることが出来ます。
特徴としてはぶつかったり、アクションしても壊れたりすることが少なく、
軽重量で作ることが出来、舞台や映像作品などによく使用されています。
ダイワハウスCM
こちらは生地縫製と造形パーツがバランスよく組み合わさった特殊衣装です。
表面のエイジングを施すことによりさらにリアリティを追加することが出来ます。
ウレタンやポリエチ素材は主にカッターで裁断して形の面を作ったり、
コンロやヒートガン等で熱を与えて変形させたりしながら立体を作っていきます。
そしてそれらを貼り合わせたりと、
衣装を作る際と似たような形でパターンを作りながら 造形 していきます。
表面の質感は既存の素材や、無い場合は一から作り出して表現していく
モンハン × デカビタ飲料 CM
キリンメッツCM
ウレタン素材やサンペルカなどの発砲系の素材表面は無数の細かい穴が開いている状態なので、
そのまま使用することはなかなかありません。
目的の質感を目指しながら既存の生地や造形材料、塗装による質感、
または存在しないものはワンオフ制作して表面を覆っていきます。
レザーやエナメルなど、いろんな生地がありますが、
基本的に縦横どちらにも伸びる２WAYの生地を選ぶと作業性に優れます。
造形材料でもラテックスやコーティング材、彫刻で作ったテクスチャースキンなどを貼り付けていくこともあります。
なので特殊衣装では、
既存の素材から塗装であったり、彫刻による質感等と数多くのバリエーションが選択出来るので、
いろんな目的を達成しやすい造形制作になります。
この特殊衣装の制作方法のとこを業界では、「直付け」や「ウレタン造形」と呼ばれています。
（一部でそろそろかもしれないですが・・・）
直付けと言っても各工程ごとに呼び名はありますが、しっくりくる総称名がそろそろ欲しいところですね。
いろんな素材を扱うので一言だとなかなか決めづらいものです。
日清カップヌードル 「７人のサムライ編」
こちらはトップアスリートの方達がそれぞれの特技を披露して格好良くCM演出されています。
着用しているコスチュームや競技用道具の外装はすべて特殊衣装の技術で制作しています。
「漫画キングダム」 連載１０周年実写特別動画
映画版キングダムも制作が進行されていますね、
この漫画、読み始めたら中毒になり仕事が手に付かない時期がありました・・・。
この特殊衣装では、通常の特殊衣装とは少し違いハイクオリティにこだわった 造形 衣装になっております。
通常は直付け技術を使用しますが、これは防具のパーツ一つ一つを手作りして丁寧に紐で繋げて作り上げています。
その場合かなりの労力を駆使しますが、クオリティは遥かに上がります。
ちなみに弊社 自由廊では特殊衣装のスペシャリストが存在します。
特殊衣装が活きる仕事の事例
呉市のゆるキャラ 「呉氏」
明治「グルト」
着ぐるみも特殊衣装の分野に入ります。
会社によっては着ぐるみを専門に制作されているところもあります。
映画「X-MEN アポカリプス」宣伝イベント
吉木りささんが持っている武器もLED部品と既存の透明素材を加工して作られています。
これはまさにアイデアと応用力の成せる技術ですね！
「SWATCH」新商品イベント
パフォーマーが装着出来るマスク使用の 造形 です。
ベルト部分は直付けですが、文字盤などの部分はデジタル出力などを使用して作られています。
実際のSWATCHを分解して仕組みを追いながらパーツ制作をしていきました。
そうですね、なかなか大変ですよ。
グレートムタ キャラクターコスチューム
特殊衣装はエンターテイメントショーとも相性がとても良いですね。
ド派手なコスチュームと音楽による演出は会場も盛り上がり 造形 も一役買って頂いております。
一番上の写真、真ん中のパイレーツ骸骨マスクは私が自由廊に来て初めて制作させてもらった 造形 です。
当時はいきなり任せて頂いたので嬉しい半面、自分で作れるのかヒヤヒヤしながら楽しみましたね。
以上です。
最後に、
このように目的は様々ですが、
工作技術を幅広く応用することによって多様なニーズに応えることが出来る分野になります。
特殊衣装という分野も広い意味では「 造形 」や「工作」と同じです。
どの分野もやはりアイデアと応用力がカギとなりますので、
いろんな素材の情報を知ることや、
なにより経験値を増やしてコツコツ積み上げていくことが大切です。
それに加え、良い作品を毎日見るというのも大事なことであります。
スタイリストといて働く知人は、
「２４時間ずっとアンテナを張り、見るもの全てからアイデア、情報を得る。」
と言っていました。
ファッションは特に流行が移ろいやすいため街中で出会う人達に対してでさえも、
常に積極的アンテナを張り続けているのだと思います。
造形 業界でも基本は同じで、ホームセンターに日用品を買いに行く時でも、
全く関係無いと思うものを見る時でさえも、
何か 造形 に応用出来ないかを常にアンテナを張っておくことが良いアイデアのきっかけに繋がってくれます。
独学でコスプレ衣装などを作られている方は業界での作り方の基礎、「型」のようなものが無い場合があり、
それが無いことによってより自由なアイデアで良い作品が生まれることがよくあります。
これはつまり技術を超え、アイデア次第、応用次第ではプロをも上回ることが可能になるのです。
私は毎日何かしらの 造形 に携わっていますが、
マンネリ化した「型」にハマりすぎることへのストッパーとして、
独学又は個人で作られている方、異業種の方の作品を見ていつも参考にさせて頂いております。
若干話が逸れましたが、この辺りで終わりにしたいと思います！
それでは、良い 造形 ライフを！ ーGoushiー
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