先日ディズニープラスから「ガンニバル」の最終話が公開されましたね。
皆さんはもう観られましたか?
まだ第一シーズンなので続きが気になるとこですが。
今回の実写ガンニバル、実は私の所属する「自由廊」で特殊メイクやプロップ制作で参加しています。
*プロップとは、いわゆる小道具。今回の場合は死体や折れる指、内臓などなどです。
ガンニバルには絶対的に欠かせない最重要キャラクター「あの人」というのが登場します。
今回はこの「あの人」の特殊メイクを中心に制作に入っておりました。
「あの人」の容姿は人とは少しかけ離れた怖い様相をしています。
「怖さ」は特殊メイクの効果を発揮出来る一つの大きなジャンルです。
なので作り手側からするとやり甲斐のある作品なのです。
「あの人」の制作は自由廊の代表であるAmazing JIROが彫刻とメイクを行なっています。
今回はその特殊メイクとちょっとしたメイキング写真を紹介していきたいと思います。
『あの人』
初めて主人公の大吾に襲いかかるシーン。
なかなか良い絵なのでお気に入りです。
村人の中でも群を抜いて背が高く様相も異質な存在です。
まだこの狂老人の素性は明かされていませんが、一体どんな成り立ちと秘密があるのでしょうか。
食人からのクールー病、ガンニバルという作品の大きな醍醐味ですよね。
続きが本当に気になります・・・
「あの人」の中身であり、役を演じている澤井一希さん
澤井さんはバチェロレッテにも出演しているモデルさんです。
「あの人」とのギャップが凄いですよね笑
澤井さんは身長が2メートルあり、実際にお会いした時は見上げながら会話していました笑
「あの人」クローズアップ
シリコーンで制作した特殊メイクパーツを頭から顔全て覆っています。
原作でも特徴的なボロボロの歯も特注の義歯です。
近年はようやくシリコーンでのメイク技術も精度が上がり、
肌とパーツの境目がわからないところまで来ております。
これだけの身長があると四肢のバランスとして特殊メイク映えが凄く作り手側からすると怖さというより、
フォルムの格好良さに見惚れてしまいます。
何か別の機会にも協力を頼みたい想いです。
「あの人」特殊メイクの粘土造形
次は「あの人」を作る上で大事な過程の一つであるキャラクター原型制作の写真です。
こちらは澤井さんのライフマスクの上にNSP粘土で造形した状態のものになります。
*ライフマスクとはご本人の顔を型取りして石膏素材に置き換えたものです。
ガンニバルの「あの人」は実際に70歳を超えた老人という見た目です。
特殊メイクという技術にとって「老化させる」という要素は一番の得意技であり、
さらに「怖さ」というもう一つの得意技も合わさったキャラクターです。
なのでキャラクター作りを担当した社長はいつも以上にやる気に満ちていました(^^
老化させるということは単純に垂れた皮膚感やシワを追加していくものになりますが、
それだけでは普通によく見るおじいちゃんになってしまいます。
かといってリアリティーからかけ離れすぎてもクリーチャーよりになりすぎるのでその塩梅調整がキーとなります。
原作の絵では目だけが異常な怖さがありますが、それを忠実にやりすぎてもインパクトにかけてしまいキャラクター性が弱くなってしまいます。
上記の粘土造形を見ると、原作の絵には映っていないディティールもありますよね。
特殊メイクの世界では「怖さ」効果のある皮膚感やシワの形がいくつも確立されています。
特殊メイクの技術はそういった形をモデルさんの顔に合う用に調整していくということでもあります。
しかし今回の粘土造形を見ると私は見たことがないディティールが見て取れます。
特に鼻横周辺の頬の細かいシワディティールです。
この箇所だけで怖さを演出しているわけではありませんが、今までに無い新しい形に踏み込んだチャレンジが感じ取れます。
そしてそれは特殊メイク後にもしっかりと「怖さ」要素として成功しているのがわかります。
社長であるAmazing JIROは粘土造形では「リアリティー」というジャンルが好きな人です。
そしてリアリティー要素の中の一つ、皮膚感やシワの成り立ちに特にこだわりが強いです。
この造形中に会話していたことで面白かったエピソードがありまして、
「シワを作っているときはお互いのシワとシワがどういう押し合いをしているか、皮膚の上で戦争をさせている感覚で作っている。」
と話していました。
シワというものは垂れ下がって出来たものや左右上下から押し合って重なって出来るシワやさらには特定出来ないものまで様々です。
社長の中では可能な限り全てのシワに原因と結果を持たせたいと思っているように感じます笑
Amazing JIROの中の一つの才能の根底にあるものはシワ戦争という深部まで考えているというところが非常に面白いですよね。
これはまさに才能という名の個性だと思っています。
話していて私も、意識せずに深部まで考えてしまうことは何だろうかとふと思い返していました笑
普段からついやってしまうことを深掘りしてみると個性の発掘に繋がると良いですよね。
こちらは特殊メイク後に髪の毛を調整しているところです。
これから頭頂部の薄くなっている箇所の髪の毛を追加していく作業になります。
凄く臭そうな雰囲気ですよね、原作に似た良さが出ています。
怖い顔ばかりだったので一旦安らぐ写真を挟みます。
こちらは本番メイクをする前に行ったテストメイク時のものです。
テストメイクでは髪の毛の汚れ具合、長さだったり、キャラクター性をどう仕上げるのか検討します。
撮影の合間ごとにメイク崩れがある箇所を修正しながら撮影していきます。
ロケバス移動。
もう既に中身の澤井さんの顔を覚えておりません・・・
最後に一番お気に入りの表情のものを。
第二シーズンはまだ公表されてませんが、続きが気になりすぎるので期待して待ちたいですね。
まだ観てない方は是非、狂気の村ホラーをお楽しみくださいませ!
それでは、良い造形ライフを!ーGoushiー
特殊メイクに興味があり、いつも見させていただいてます。
個人的にリアルなシリコンマスクの制作に挑戦中なのですが塗料は何を使って塗装していますか?
また、剥がれたりしないものですか?
Nぴろさん
いつも見て頂きありがとうございます。
シリコンマスクは特殊メイク用でしょうか?
特殊メイク用であれば、表面がプラスティック膜がありますので塗装は一般的なアクリル系塗料で大丈夫です。
特殊メイク用マスクは基本的に柔らかいので動かせば動かすほど段々剥がれてはきてしまいます。
表面がシリコンの素材であれば塗装の仕方は変わってきます。
シリコンという素材は塗装でも接着であってもシリコン素材でないと定着しないという性質があります。
なので塗装する場合、塗料にもシリコンを混ぜて作っていきます。
塗料の素材は油性塗料(油絵の具やシリコン専用トナー)とコーキング類を組み合わせていくと塗装剥がれもなくいけると思います。
シリコンと塗装膜の間に余分な油分や汚れなどがある場合は後から剥離する可能性もあります。
ご回答いただきありがとうございます。
特殊メイク用というのは日本でも購入できますか。何というものなのでしょうか。
マスク製作は一般的なシリコンを買って成型する予定なので、後者の方法になりそうです。
ちなみに後者の方法の場合エアブラシやスパッタリングを行うのはどうすればよいでしょうか。
コーキングシリコンの粘度を調整しなくてはいけないのでしょうか。
Nぴろさん
特殊メイク用になりますとそれなりの技術と知識も必要になりますので一般的ではありません。
マスクの場合ですともう少しハードルは下がると思います。
シリコンは基本透明シリコンであればいけると思いますが、造形村透明シリコンやIS-CRT40等が購入しやすいですね。
コーキングは確かに粘度がありますので、溶剤で希釈して作業しやすいように調整していきます。
ベンジン、ラッカーシンナー、ホワイトガソリン、ヘキサン等どれを使用してもOKです。(基本コーキングが溶けるものであれば大丈夫です。)
なるほど、ありがとうございます。
希釈し塗装した際に艶が出てくるかと思うのですが、マットにする方法はあるのでしょうか。
マットにするためにはsmooth-on社のNovocsというのを使用しています。
https://www.youtube.com/watch?v=YqNQonhw7uM
紹介動画がありますので貼っておきます。
ありがとうございます。
参考にさせていただきます。