今回はとても?人気のあるキャラクター ゾンビ について考えていこうと思います。
特殊メイク、特殊造形の世界で働いていると必ずと言っていい程 ゾンビ を作る機会があります。
映像作品においても毎年新しい ゾンビ に関した映画などが次々に発表されています。
そのおかげで私たちの技術の需要が増え毎年幾らかの ゾンビ 作りに励んでいます。笑
しかしいざデザインしようとした時そもそも ゾンビ の特徴は??
と、なったことはないでしょうか?
ゾンビ というと一般的にはどんな姿をイメージしますか?
ゾンビ についてあまり詳しくない方はおそらくよく映画で登場するような姿形を想像するのではないでしょうか?
特に日本だと必ずどこか負傷していて血がダラダラ垂れたような印象が強いのではと思います。
そしてゾンビの発端は実験で失敗したウイルス的なもののイメージが多くあると思います。
現在はいろんな種類の ゾンビ の設定があると思いますが、
ゾンビ をデザインするにあたってその定義をまとめてみたいと思います。
![ゾンビ女](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/zombie-595962_640.jpg)
と、その前に ゾンビ の起源をまず調べてみました。
すると一般的なイメージとは違い、
実は必ずしも腐っているとは限らず、人を襲うというのも無いということが分かりました。
では、その有力な説である ゾンビ の起源についてお話ししていきます。
本来のゾンビは一般的イメージとは異なるもの!?
![ブードゥー教](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/sculpture-538871_640.jpg)
ゾンビ の起源を辿っていくと「ブードゥー教」というものが発端になっていることが分かってきます。
ブードゥー教とは中南米でアフリカから連れてこられた黒人奴隷の精霊崇拝と、
キリスト教の一部が混ざり合って出来た民間信仰のようなのです。
宗教法人の認可は無く、特徴的なダンスや生贄え、スピリチュアル的な儀式が多く、
日本では少し怖い怪しいイメージで認知されていますね。
そして本来の ゾンビ とはこのブードゥー教の儀式によって生み出された「生ける死者」のことを言うそうです。
さらに ゾンビ という言葉の出所もはっきりしておらず以下のような諸説があるそうです。
コンゴの黒人の神や精霊を表す、「ンザンビ Nzambi 」、
西アフリカで呪物を表す「ズンビ Zumbi 」、
アメリカ先住民が幽霊を表す「ジャンビ Jumbi 」等があるそうです。
どれも響きが似ているので信ぴょう性は高い気がしますね。
![ブードゥー教](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/voodoo-736095_640.jpg)
そして本来の ゾンビ というものは、
ブードゥー教の司祭ボコールによって蘇った死者のことを言うそうです。
そのゾンビには特徴があり、
◉ 自らの意思や個性を持たない
◉ 外見は人間に近い
◉ 食事は普通にする
そして司祭ボコールの完全なる支配下にあり奴隷としての役割だったと言う説もあります。
最近の映画に出てくるような設定とは全く違いますね。
![奴隷](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/corpse-1296043_640-300x258.png)
ブードゥー教では人間は以下の5つの構成要素からなっていると考えられています。
◉ グロ・ボンナジュ・・・人間の魂
◉ ティ・ボンナジュ・・・意思や個性、思考などを司る魂
◉ ナーム・・・肉体を活動させる魂
◉ ゼトアール・・・運命を司る魂
◉ コール・カダブル・・・肉体そのもの
ここでゾンビ作成に使用する魔法の粉である「ゾンビパウダー」というものを使用していくのだそうです。
ゾンビパウダーを摂取すると一旦、死亡します。
通常の死ではコール・カダブル(肉体)だけが残りますが、
ゾンビパウダーによる死はナーム(活動エネルギー)が留まり、コール・カダブル(肉体)の腐敗が起こらなくなるそうです。
その後司祭ボコールの暗黒の儀式によりさらにグロ・ボンナジュ(人間の魂)が戻されます。
こうして、コール・カダブル、ナーム、グロ・ボンナジュの3つだけの構成となり、意思の無い肉体であるゾンビの誕生です。
ちなみに ゾンビ 奴隷にされる対象は悪行を働いた者への刑罰や怨恨などによるものであったようです。
人格は無くなってしまいますが死刑以上の重罰刑だったようです。
このゾンビパウダーの生成には赤ん坊の死体から作られるとも記述が載っていました。
科学がまだ存在しない時代の儀式や文化には恐ろしいものがありますよね・・・。
![モンスター](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/03/beast-1296033_640-300x185.png)
と、長くなりましたがこのような起源でゾンビは誕生したようなのです。
それに比べ、近年の ゾンビ の特徴はもっと凶暴で恐ろしい存在です。
この特徴の起源も調べていくと映画業界が発端であることが分かります。
新しいゾンビの概念を作った映画監督 ジョージ・A・ロメロ
![映画](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/f66f254795375d94ba068b5002b90a21.png)
ブードゥー教のゾンビをもっと過激にエンターテインメント要素を追加して発展させた映画、
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」という作品により徐々にゾンビの概念が変わっていきました。
この映画は映画好きなら誰もが知っているジョージ・A・ロメロ監督の有名な作品であります。
この映画の影響によりゾンビは腐りかけた姿や腐った皮膚が一部削げ落ちたような姿で、
生きた人間を襲うという一般的イメージが浸透していったとされています。
![ゾンビ](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/zombie-949916_640.jpg)
その後様々な映画で ゾンビ の設定が継ぎ足されていきます。
思いつく現代 ゾンビ の新しい特徴を書いてみようと思います。
◉人を襲うというか食べる、とにかく食欲モンスター(生きた人間の匂いで反応するものも)
◉ゆっくり動くものから走るものも(ドーンオブザデッドでの猛スピードには恐怖を覚えました。どこにそんな筋力が・・・)
◉皮膚が腐った色をしている(なりたてはまだフレッシュな色、元々あったナームの力はどこへ・・・)
◉目は充血や白濁していて焦点が合っていない (白いカラコン)
◉ミイラみたいな奴もいる(老化??もしくはミイラがゾンビ化したものなのか)
◉表皮が削げ落ちグロテスクな姿
◉血液まみれ
◉血管が走っている
◉感染力が強大、噛まれるとゾンビになってしまう(ゾンビウイルス)
◉頭を破壊しないと完全には停止させられない
◉群れる
◉謎の外傷だらけ(一般的イメージ)
◉ギャグ要素が強いゾンビもいる
等、他にも知らないものもあるかもです。
そして次にようやく今回のメイン内容となる ゾンビ の造形を作るにあたって何が重要かをみてきたいと思います。
ゾンビの外形的造形
![ゾンビ](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/zombie-1801470_640.jpg)
ゾンビ を造形するにあたりブードゥー教からの起源から調べましたが、
あくまでも一般的なイメージの方を大事にした方が ゾンビ と認知してもらえそうですね。
ブードゥーのゾンビは見た目が普通の人間に近いので迫力に欠ける恐れがあります。
もちろんどんな設定のゾンビを作るかにもよりますが何も縛りが無いのであれば、
エンターテインメント性を考えたデザインを練るのが良さそうですね。
キャラクターというのはやはり特徴的な形や色が大事ですので造形するゾンビにも、
数ある特徴の中から合ったものを選んで迫力のあるキャラクターに仕上げていきたいですね。
![ゾンビ](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/man-520042_640.jpg)
私が思うエンタメ性が強い良いデザインのゾンビの外形的な特徴と必須要素を挙げていきます。
◉ 腐敗した皮膚が剥がれて中の組織が見えている(外傷が無くてもゾンビは成立するがあった方がエンタメ性アップ)
◉ 目は充血し、虹彩は白濁していてる(焦点をずらすとさらにエンタメ性がアップ)
◉ 肌は血色の悪い色をしていて血管が浮き出ている
◉ 骨格が浮き出ている(中には肥満の格好良いゾンビもいます)
◉ 骨格にメリハリのある顔立ちはゾンビが似合う(顔に凹凸があればあるほど作りやすい)
次に注意点です。
◉ ゾンビ を作る際の一般的なイメージで謎の外傷要素があるものが多いと思います。
そこを腐敗による組織の損傷にするとよりリアリティが増します。
(切り傷や何かの武器による外傷は設定がある時のみ)
ただその損傷の形をデザインする際、迫力を出すためにはダイナミックな形にしないといけないので、
武器で付けられたような勢いのある傷の形にわざとデザインすることもあります。
◉ こちらも一般的なイメージですが実は「血」の表現はそこまで重要では無いです。
血はアクセント程度にして他の要素で魅せる方がリアリティが上がります。
◉ 特殊メイクで ゾンビ を作る際一番難しいことは東洋人を変身させる時です。
西洋人に比べ顔の凹凸が少ないので色だけでは怖い印象になりにくいことが多いです。
顔の凹凸が少ない場合は目にカラコンを入れることが重要になってきます。
絵を描く技術が必要になりますが顔の骨格を強調させる陰影を描くことも効果絶大です。
以上を踏まえた上で ゾンビ を作っています。
この中でも色の部分である目の白濁、血色の悪い肌、血管だけでも ゾンビ の表現は可能です。
形を変えずにシンプルにまとめると本来のブードゥーゾンビに近づいてきますね。
ブードゥーゾンビを作る時はやはり骨格が強い形で造形すると格好良くなりそうです。
![特殊メイク](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/5b15396f0e64925d7208360c40aec305.png)
ここで以前造形したゾンビに近い原型彫刻をいくつかご紹介していきます。
![ゾンビ](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/07/IMG_1615-300x300.jpg)
![ゾンビ](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/07/IMG_1620-300x300.jpg)
![ゾンビ](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/07/IMG_1698-300x300.jpg)
![彫刻](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/07/IMG_1663-300x300.jpg)
テーマは元々ゾンビではありませんが形は一緒のようなものですね。
造形的にはオーソドックスな形ではなくマニアックよりだと思います。
作るものがありすぎたのでほぼ勢いに任せて自然に出来た形を整えただけなのですが。
こちらの特殊造形アートで使用したものです。
特殊メイクでも人工皮膚マスクを使用すると驚くほど変身が可能になります。
映画ウォーキング・デッドの ゾンビ はデザインや設定がしっかりしていて一つの見所になってますよね。
そのウォーキング・デッドと似た方法で特殊メイクを施した実例をご紹介します。
例えばこちらのモデルさんを ゾンビ に変身させると・・・、
![モデル](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/fb5b5a50ff2e077b93539c82f8e57b8b-300x266.png)
このような驚愕の姿になってしまうのです。
![特殊メイク](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/2ed5be50a23e2e5f6348edeea6b1513a.png)
出くわしたらかなりヤバめの状況なゾンビですよね! 走るのも早そうな顔をしています。
最後に、
私が思う ゾンビ 作りの定義は、
ゾンビ はブードゥーゾンビのような色だけでも表現は可能なのでまずどのような色にするとインパクトがあるのか認識しておく。
次に顔の凹凸、骨格の表現を重視する。(頬骨や目の周りの骨は特にポイントになります)
最後に外傷、損傷部分の配置バランスを調整しながらデザインしていくことで格好の良い ゾンビ が誕生します。
![感染](https://goushiart.jp/wp-content/uploads/2018/11/walking-dead-1666584_640.jpg)
それでは、良い造形ライフを! ーGoushiー
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