自由廊の造形スクールのカリキュラム、「キャラクター特殊造形」。
毎年見本のサンプルを一つ作っています。
今回は宗教的な悪魔サタンをイメージして水粘土で作ってみました。
特殊造形の上達にはヒトの基本フォルムを知ってその形を自由に使いこなすことが必要不可欠です。
その基本のフォルムをおさえたら、次はそのフォルムを変形させたり誇張したりして個性のあるキャラクターを創造していきます。
これが上達の第2ステップです。
キャラクター造形は第2ステップではありますが、実は完璧なヒトを作ることの方がビギナーにとってはハードルが高いです。
第2ステップでは、ヒトの基本フォルムが完璧な形でなくてもバランスさえ取れていれば成立させることが出来ます。
特殊造形ビギナーに向けた造形フォルム
今回の粘土造形には以下の5つの項目に沿って制作しています。
・顔となる基本の稜線や形を入れ込む
・その稜線や形を誇張変形させる
・表情を付けて皮膚や肉感の動きを付ける
・パーツや輪郭等のバランス調整
・資料からトレースする技術
・キャラクター要素
特殊造形の世界は元々クリーチャーを生み出す技術です。(全てではありませんが)
フィクションだけどリアリティーを感じさせるクリーチャーを作るには、
この世界に実際に生きている生き物から連想させることが第一条件になります。
特にヒト型のクリーチャーは今までで一番多く作られています。
ベースのヒトの形に別の生き物を融合させたり、変形させりしてクリーチャーは作られます。
特殊造形ビギナーの場合、特に誇張させたり変形させて作っていく方法が上達にとても繋がると私は考えています。
実際に私はこの過程をジョルジュ・シェル(Jordu Schell)というスカルプター作品から感銘を感じて、
ビギナーの頃はよく真似して作っていました。
誇張や変形は目や鼻や口などのパーツ配置をずらしたり、サイズを変えてみたり、
奥行きを大胆に変えたりしながら構成することです。
そのためにはこちらの写真のような基本配置を初めに知っておくこともある程度必要です。
これはおおよそ最低限数の稜線で作ったヒトのフォルムです。
この最低限数の稜線が顔を作るにはとても大事で、クリーチャー作りもここから始まります。
これは一見ヒトに見えますが、誇張と変形のみで作ったぎりぎり?クリーチャーです。
先ほどの写真よりも輪郭ラインが激しくなっていてそれぞれの形にメリハリを強調しました。
輪郭は正方形型、目の距離、眉骨の位置、口端、そして奥行き感など大胆に構成してみた造形です。
格好良さの要素は足りないので登場シーンは少なめのモブキャラ止まりかもしれません。
テクスチャーの仕上げ方は実はもう一段階細かく出来たのですが、
それぞれの稜線フォルムを捉えやすくする目的もあり今回はシンプルなテクスチャーと皮膚感にしています。
それと、テクスチャーを抑えめにすることで造形物としてのダイナミックなフォルムを目立たせる一つの要素にもなります。
フォルムのダイナミックさと精細さはある意味天秤に掛けるようなものなので毎回その調整段階はどっちも譲れない苦しい思いがあります。
良い見本をトレースする大事さ
そして上達に欠かせない技術、「良い見本をトレースする」ことです。
ビギナー段階でのレベルアップにはやはり良い見本をしっかり選び、
それを実際に作ってみることはとても大事なことです。
今回のフォルムサンプルは口元が奥にぐっと入ってニヤけている表情です。
その周辺(頬辺り)の肉感や表情筋の動きはあるスカルプターの作品のフォルムを取り入れています。
こちらがそのトレースさせて頂いた作品です。
(作者不明ですが、確認出来次第詳細更新致します。)
目的や表情、奥行きのバランスが少し違っていたので100%トレースではありませんが、
肉の流れやふくらみを大分参考に作っていきました。
このように50%くらいのトレースだけでも見本が良ければトレース先の造形にも十分に活かせます。
トレース技術は単純に技術向上に向いていますが、
いくつか取り組むことで良いフォルムのバランス感覚を養えることが出来ます。
そしてバランス感覚とリアリティー解剖学が混ざり合うことでさらにキャラクターの存在感も増し魅力あるフォルムが生まれます。
キャラクターの設定
顔の印象テーマは「悪魔」です。
今回の造形の目的はビギナー向けの参考フォルムではありますが一応キャラクター設定も決めながら作りました。
あまりフィクションフォルムは入れられないので派手な設定には出来ませんでしたが個人的には好みの方向性に決めることが出来ました。
宗教画に登場するような姿かたちが人間に近い悪魔。
人間は外見フォルムも内側の精神面も多面体(ポリへドロンマン)です。
人によって接し方が違うように人によって見せる面は皆んな違います。
ですがそれを含め、その多面性こそ人間の特徴であると思っています。
そして誰しもに存在する闇の一面、まさに悪魔を垣間見た姿を表現しています。
人は嫉妬や欲によって時には悪魔の一面が表に出てしまいトラブルの原因を生みます。
その悪魔の面は人間の一部であり、いざという時の武器にもなりえます。
悪魔の面のみが出てしまわないように悪魔を緩和する面も同時にコントロールしながら中庸を目指したいですね。
というような設定を浮かべながら造形しておりました・・・。
如何でしたでしょうか?
顔の造形にお悩みの方は、誇張表現、変形、そしてトレースを是非お試しください。
それではみなさん、良い造形ライフを! ーGoushiー
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