私が所属している「自由廊」では後継を育てるための造形スクールも運営しています。
私も自由廊での仕事をこなしつつ、科目ごとの交代でスクールの講師もさせて頂いています。
この造形スクールは今年で14年目に入りますが、コロナ騒動の影響で一旦休業という形を取っています。
来年の4月からまた再開する予定ではありますがコロナ騒動、本当に早く改善して欲しいですね〜。
来期14期生、造形が好きな方を超募集しております!
ちなみにスクール名は「Amazing School JUR」です。
現在ご検討の方、一度無料見学会へお越し下さい。
そして今回は、その造形スクールで生徒の皆が制作した作品をいくつかご紹介していきたいと思います。
Amazing School JURは1年間の造形養成プログラムになっており、
特殊メイクの実習と特殊造形と呼ばれる立体物制作の大きく分けて2種類のカリキュラムを交互に学んでいきます。
今回はその「特殊メイク」を中心に書いていこうと思います。
特殊メイク実習
特殊メイク実習ではメイン課題となる「ヒト × 他の生き物」と「老化」の特殊メイクがあります。
「ヒト × 他の生き物」
特殊メイクはまずヒトに対して行うためどうしてもヒトの形を多少なりとも生かすようなデザインを作る必要があります。
掛け合わせる生き物の割合が大きくなりすぎてしまうと、ただの仮面のようになってしまったり、
特殊メイクの醍醐味であるリアリティーが無くなってしまったりしてしまいます。
ヒトと生き物の掛け合わせ具合のバランスを取ることがここでは大事なポイントになってくるのです。
初めは既に成功している掛け合わせ例を見つけてそのバランスポイントを見つけることが上達への最短の道です。
それでは実際の生徒作品を紹介します。
「地上の生き物」、「空の生き物」、「海の生き物」、「爬虫類・昆虫」とそれぞれのジャンルに分けていきます。
ヒト × 地上の生き物
「ナマケモノ」
ナマケモノを擬人化したようなサラリーマンキャラの特殊メイクです。
本来のナマケモノのカラーとモデルさんのヘアカラーも同色にすることでとてもなじみが良く、
形がヒトの輪郭内に収まっていてリアリティも損なうことなく表現されていると思います。
しかし、ナマケモノのこのキャラは社会のスピードに適応出来ているのか心配になりますね〜、
無事に自分の特性を生かせる職場を望みます・・・。
「ヒョウ」
特殊メイクでキャラクターを作るとき、
生き物としてかなりリアル寄せにするか、一つのキャラクターとして作るか演出的な分かれ目があります。
リアル寄せにする場合、その生き物をそのまま作る高い技術が必要なので特殊メイク初級時にはあまりオススメしていません。
ここに載せている作品のように「生き物」×「キャラクター」という部分を追加すると未だ足りていないクオリティーを
補ってくれる要素になります。
それにしてもこの女豹、表面的にはかなり高慢な雰囲気がありますね〜、どういった事業をしているのでしょうか。
「ライオン」A
次はライオンを選択した2種類の特殊メイクです。
まずは正統派ライオン × ギタリスト。
特殊メイクではモデルの顔立ちとチョイスした生き物の相性が良いと本当にカッコよく仕上がります。
今回はあまり変えることが出来ない顔のバランスと目つき、共にライオンとマッチしていて良い結果が出ていると思います。
一つリアリティーを追加するとすれば、顔周りにヘアと馴染むように幅広い生際があるとより良いです。
それにしてもライオンを従えるヴォーカルの方が気になります。
「ライオン」B
見るからに派手派手な渋谷系キャラクター。
こちらは正統派に比べてリアリティー割合を抑え、キャラクター演出に振り切った特殊メイクです。
特殊メイクは主役ではなくトータルコーディネートでバランスを取り成立させています。
リアル系も見応えありますが、キャラクター寄せのものはより親しみがあり楽しい雰囲気を作ってくれますね。
ただのレインボーコレクターだったりして・・・
「パンダ」
モチーフとしては数少ないパンダ、今回は良い佇まいのパンダが出来上がりました笑
顔まわりの毛並み表現の付け位置が特に良いですね、このキャラクターを作るのに一役作っています。
頭部はボールドキャップという薄いゴム製の水泳帽のようなものを被せて、顔と色を合わせています。
特殊メイクは意外と「毛」の要素がすごく重要で、あるかないかでリアリティーとキャラクター表現に大きく関わってきます。
それにしてもこのパンダ、食べない笹の竹部分を武器にしている・・・、エコで現時代的な奴ですね。
ヒト × 空の生き物
「フクロウ」
次は空、鳥類のフクロウがモチーフです。
これはモリフクロウという種類で賢者のメタファーを持つフクロウです。
モデルの髪型を上手く取り入れたバランスの取れたキャラクターになっていますね。
実際のスクールでの実習では相手の髪の長さは選べないのでその時モデルになった方がどの生き物とマッチするのかも意識することが大事です。
「フクロウ」
続いてこちらはメンフクロウです。
面フクロウの「面」を利用した奇術師のようなキャラクターになっていますね。
生き物に付けられた名前を個性としてキャラクターに乗せることも創作として楽しいですね〜。
メンフクロウはフクロウの中でもミステリアスなイメージとして使われてたりしますよね、可愛い顔とミステリアスな奴とで色んな顔を持っています。
私もメンフクロウは動物の中でも特に好きです。
「カラス」
仮面舞踏会のコスチュームのような特殊メイクです。
仮面はあくまでも被っているもの。それに対して特殊メイクは仮面を肌に馴染ませ一体化させることが出来ます。
そしてこのカラスの特殊メイクは”仮面”と特殊メイクの間を狙った表現方法です。
仮面のようにも見えるが、カラスの擬人化でもないという中間的な存在です。
この中間的な表現は意外と多く、ゴリゴリの特殊メイクよりも活用しやすいかもしれません。
もしかしたらこの生徒は狙ってないかも・・・。
ヒト × 海の生き物
「魚人」
次は海の生き物編です。
特殊メイクのモチーフとして「魚類」というのは意外と種類が少ないものになります。
映画半魚人やヘルボーイのエイブサピエン等は有名ですが、それ以外の魚人メイクはあまりありません。
おそらく理由としてはヒトと海の生き物では骨格等の形に差がありすぎるせいでデザインが難しいのだと思っています。
そんな難しいモチーフにトライした半魚人作品です。
特に口元の細かな形が海の生き物を連想させていて魚人を成立させています。
キャラクター的にはアトランティス国の神官でしょうか。
「魚人」
魚に詳しくないのでモチーフはわからないですが、こちらも魚人として成立していますね。
この魚人のデザインは、魚の形を大胆に取り入れて魚寄せのバランスになっています。
モデルのヘアも効果的です、やはり髪型も取り入れたデザインにすることでより良い作品に繋がっていきますね。
この魚人はおそらくチンピラ。
「魚人」
金目鯛?または金魚のような雰囲気をもった魚人。
煌びやかな出立ちで位の高そうなキャラクターですね。
ウィッグを併用して特殊メイクに華を添えた表現です。
海の生き物の頭部は基本的にツルッとしているものが多いので、
ヒトと掛け合わせる場合頭の輪郭に特徴を持ってくることが難しいです。
なので海洋生物には無いヘアーの要素を加えることで全体の輪郭のバランスを取ることが出来ます。
ヒト × 爬虫類・昆虫類
「ヘビ」&「コブラ」
特殊メイクの世界では爬虫類、特にヘビはヒトととても相性が良く、特殊メイク映えするモチーフの一つです。
生き物は生息地によって姿形構造が全く違いますが、
ヒトがいる場所に近づくほどヒトとの掛け合わせが容易になっていきます。
なので特殊メイク初級編ではこの辺りを考えてデザインしていくことをおすすめしています。
キャラクター的には砂丘の呪術師(蛇の呪力)と暗殺者(コブラの毒)の凄腕コンビに見えます。
一番出会いたくない種類ですね〜。
「ヘビ」
ヘビメイク続きます。
こちらはヘビメイクのお手本に近い仕上がりです。
ヘビの顔の奥行きをヒトの顔に上手くあてはめていて非常にバランスの取れた造形だと思います。
白蛇にエジプシャンな演出もさらに良いキャラクター感を増しています。
ヘビのキャラクターには知的で冷静な印象を受けますが、怒らせてしまうと厄介なことになりそうです・・・。
「爬虫類ミックス」
爬虫類の鱗とトゲをバランスよく配置したトカゲorイグアナのような女性キャラクター。
これだけ厳つい様相でも女性に見える要素とは何なのでしょうか。
基本的に女性は男性よりも骨格の形が緩やかで角が丸い特徴があります。
確かに大きな形で捉えると全体的に緩やかではありますがそれだけではない別の要素がある気がします。
もしくは複数の要素の組み合わせなのか・・・、顔ってやはり面白いですよね。
悪役感が満載ですが、どことなく話が通じる感じがしますね。
「美」方向のサービスで仲良くなれるかも・・・とりあえずネイルをやってあげたい。
「カマキリ」
紹介する最後の特殊メイクは、カマキリ × 花魁という珍しいキャラクターです。
カマキリは形に特徴が多いので本来の色とは違った色にしても問題なく成立していて花魁という世界観にもぴったりです。
造形としてはカマキリの逆三角形のラインと眉の傾きライン、口元の牙の方向がマッチしていてこのキャラクターをより凶暴で格好良い印象を与えています。
妖艶で誘き寄せて獲物を捉えそうないかにもな戦闘スタイル、最終的には変形して真の姿になりそうですね。
スクール生の作品紹介は以上となります。
一番初めはやはり難しいので各講師が毎回見本としてデモンストレーションを行います。
特殊メイクをするにはまずモデルの顔の石膏型をとる必要があります。
そしてモデルの顔立ちをよく考えながら特殊メイクのデザインを考えます。
絵(二次元)は正確な奥行きを無視しても成立するのである程度のデザインバランスを取るのに必要な工程です。
個人的には簡単なラフスケッチ程度で雰囲気がわかる程度で十分です。
実際に石膏型の上に粘土でデザインに沿ったバランスで造形していきます。
この粘土で造形する段階が特に難しく、そして一番楽しい時間になります。
この工程で全ての形が決まってしまうのでじっくり考えながら慎重に、美術的な意識を最大限意識して仕上げていきます。
その後型取りや別の素材に置き換えたり色々な作業を経て、特殊メイク、作品撮影です。
「ミノタウロス」
ミノタウロス族のドンのような存在感。
顔に刻まれたリアリティーのある質感から何事にも対応する説得力のようなものが伺えますね。
こんなキャラクターをあまり特別演出せず、さも存在しているかのような物語の映画を見てみたいです。
ただそうなると特殊メイクアップチームはかなり大変なことになりますがね笑
特殊メイクの実習の他、造形制作に関わる様々なジャンルをレクチャーしております。
造形を仕事に、もしくは生き甲斐にしたいと思っている方は是非、弊スクールWEBサイト又は見学にお越し下さいませ!
それでは、良い造形ライフを! ーGoushiー
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