私が造形をするとき、人の顔をモチーフとしてデザインすることを決めています。
そのため人の顔というのは私にとって重要性が高いものになっています。
人の顔だけではなく生物の形は複雑で、奥が深く、芸術性に溢れています。
そして何回も繰り返し作ることでそれぞれの形の意味を知り、生物のさらなる素晴らしさに気付くことも魅力の一つです。
私はこの生物、特に人の形の素晴らしさに触れることで生きる喜びを感じることが出来るほどです。
しかし、 人の顔を作ることはとても難しいのです。
普段の生活の中で人の顔を見ない日はほとんど無いと思います。
「この人の顔はこういう形」というふうに潜在意識の中にも必ず入っています。
ですが、一般的にそれを実際にリアルに絵に起こすことも彫刻で表現することも難しいですよね。
そこでどういう風に対象を見るとこの形だからこの人であるという認識が出来るのかを考えるようになりました。
客観的に対象を見る時
何も意識せず人の顔をぱっと見た時皆さんはまずどの部分を見ていますか?
意識していないので後で考えるのは難しいと思いますが、印象に残っている部分を考えてみます。
私の場合はまず「目」「鼻」などの形がはっきりとあるパーツがある部分、距離がある場合はその人の「輪郭」を見ています。
おそらくほとんどの人がそうではないでしょうか?
そうなると、目線が自然にいくところというのは対象の中で「一番暗い部分」と「一番明るい部分」、次に「輪郭」になると考えました。
少し話が飛びましたので、それぞれを解説していきます。
ではまず、こちらの男性をあまり意識せず何も考えずに眺めてみて下さい。
最初は「目元」に目線が行くのではないでしょうか。 あるいは、髪の毛や服など。
勿論人によっては普段意識しているところにまず目がいくということもありますが、
今回は完全にリラックス状態で見た場合としておきます。
自然な状態で見た場合には対象の中で目立っている形や色等に目線が行きがちになりますよね。
それをさらに考えていくと、、、
最初に目線がいくところ = 目立つところ。
そして、
目立つところ = 周りの形と比べて凹凸が激しいところ、またはその部分の色濃度が高いところ。
なので、
形の凹凸が激しい、色濃度が高いところ = 「暗い部分」、「明るい部分」 となります。
「輪郭」の方は対象と周りの背景との距離の差、光の当たり具合があるためここも目立つ要因の一つです。
カラー写真だと初めは分かりづらいのでモノクロに変えて見ていきます。
全ての色を白黒で見ていくと「暗い(=黒に近づく)」「明るい(=白に近づく)」が分かりやすくなると思います。
目立っている暗い部分 は 髪の毛、目元、口元、服など。
目立っている明るい部分 = 目の白い部分、鼻横の光、右側の輪郭など。
この写真には背景が無いので輪郭はより目立っています。
逆に中間的な暗さ、明るさの部分に関してはあまり目立たないので、印象としてはあまり鮮明には残らないです。
このように見ていくとある対象を見た時はその中で一番暗い、明るいを見分けて印象を受けて見ていることになると思います。
よく子供が描く人の絵も輪郭と顔のそれぞれのパーツだけを表現することを考えると人という形をどう見ているのかがよく分かります。
人によっては、頬がこけていたり、皺が目立っていたり、目元のホリが深かったりと様々です。
このことから、人の顔を作る時は全体を見てどの部分が一番暗いのか、明るいのか、どこが一番印象が強いのかを意識して作ることはとても重要な事柄になっていきます。
特徴を捉える練習
先ほどの男性は若くて目立つ部分が少ないので、こちらの男性も見てみたいと思います。
一見特徴しか見当たらないですよね?笑
特徴が多い人は基本的には作りやすいのですが、その中でもどの特徴が一番目立つのかを見つけていくことが大事になります。
探し方としては対象と距離を置き、細かい形が見えない位置で見ていきます。
(仮に距離感を出すために写真を小さくしてみましたので拡大は厳禁です。)
如何でしょうか?
近くから見た時に比べて距離を置くことにより目立つ部分が絞り込まれてきたと思います。
顔だけに注目して見ていくと、一番目立つ部分は目元の暗さ、鼻筋の明るさ、ヒゲ下の影の暗さが目立ちますね。
この男性を作っていく際にはこの3つの部分を一番目立たせることで特徴を捉えることが出来るということになるのです。
結果
人を造形していくポイントは他にも数多くありますが今回考えた中では、
◉対象を客観的に見る(自然に見る)とその中で目立っている部分に印象を受けやすい。
◉印象を受ける形とはその特徴、キャラクター性であると言える。
◉特徴を目立たせるためには「暗さ」「明るさ」のレベルを調整することが大事になる。
◉「暗さ」「明るさ」とは形の凹凸具合(奥行き)、その部分の色味の濃さに当たる。
(陰影やメイクの色の濃さに惑わされないように気を付ける必要があります。)
造形に集中していくと段々と主観的になり、自分だけが意識している印象に囚われがちになります。
自分で作ったキャラクターが客観的にどう見えているのか意識することはとても大事です。
時間を置いて見たり、遠く離れたところから見たりしながらキャラクターの印象を確認することで、
主観的になりすぎるのを防ぐのもテクニックの一つです。
また「形」について他にも考えていきたいと思います。
それでは! ー Goushiー