生物の 造形 をする時はまずその骨格と筋肉の構造をよく理解した上で形を作っていきます。
生きているものはその生態、環境に合った形をしているため、このベースとなる部分を知らずしてその生物を作ることは難しいです。
ですが骨格と筋肉はとても複雑でさらにその上に脂肪や皮膚などそれ以外の組織も付いているのでなかなか理解するのに時間が掛かってしまいます。
体を構成している組織はたくさんありますが、表面から見える形で捉えると全てを知らなくてもある程度の形を作ることが出来ます。
今回は生物を造形するために必要な、大きな形に注目して考えていきたいと思います。
骨格

今回は一番馴染みのある人間の頭蓋骨で考えていきます。
まずは一番下にある組織、「骨」の資料から集めていくところから始めます。
この頭蓋骨だけでも観察する箇所はたくさんあり、初めての人は情報量が多すぎてどこから捉えて良いやらという状態だと思います。
どういう形でもそうなのですが見れば見るほど中心のパーツ、眼窩(アイホール)、歯など目立つ部分を優先で見ていきがちにもなります。
まず初めに大事な観察点というのは細かい形やパーツではなく、大きく形に変化があるところになります。
骨格の資料を見る際はまず、大きく凹んでいる部分、大きく凸む(突出した)部分だけに注目して捉えていきます。
(凸む → つばくむ)

頭蓋骨の顔側のみの場合ですと、
【凹】
◉眼窩(アイホール)
◉鼻
◉頬骨の下
◉こめかみ
【凸】
◉眉間上部の眉骨
◉こめかみ手前の眉骨
◉頬骨
◉鼻
◉顎先
◉エラ
あまり多くに絞りすぎるのも初めは迷いに繋がりますのでこれだけにしておきます。
今は写真一枚での資料で見ていますが実際には出来るだけ多くのアングルから見れる写真が必要です。
それぞれの凹み、凸む部分のなかでもさらにそのどこが凹み、どの向きに凸むのかも確認しておきます。
筋肉
次に筋肉が骨のどこにどのようにくっついているのか観察していきます。
実際には筋肉以外に様々な組織が付いていますがここではまとめて筋肉としておきます。
1つ目のポイントは筋肉がどこからどこへと繋がっているのか。
これは表情を付けたときに、その筋繊維がどこに向かって押すのか引っ張られるのかを知るための観察になります。
特に頬の筋肉が分かりやすいですね。
解剖図を見ながら鏡の前で自分の顔を動かしてみて表情がどの方向へ動くのか確認出来ます。
2つ目のポイントは筋肉が骨の凹凸をどれくらい隠しているのか。
骨には大きく開いた空洞や尖った形があります。
これも自分の顔を触ったりして骨の上にどれくらいの厚みの筋肉が張り付いているのか確認してみます。
解剖学的に厳密に勉強しようとすると膨大な情報量で難解なものにもなりますのでその辺はまた後々のステップで良いと思います。
骨の上には筋繊維とそれ以外の組織が張り付き骨を覆っています。
実際に造形していく形は皮膚の表面の形なので、骨の形が影響しているところ、筋肉の形が影響しているところに分けて見ていくと分かりやすいと思います。
観察を繰り返していくと全てではありませんが共通する部分が発見出来ます。
頭蓋骨の凹んでいる部分には厚みのある筋肉が付いていて、凸む部分には薄く筋肉が付いています。
筋肉が薄い部分というのは骨格の形が表れている部分ということになりますので、造形をする上で正確な形に近づくヒントになります。
骨格というのは性別、年齢、体型などで分けて見たとき、それぞれでバランスは違いますが大きくは共通の形をしています。
なので筋肉が薄い部分を作るときは頭蓋骨の形を見ながら作っていくと上手く表現することが可能になります。
この筋肉が薄い部分は頭蓋骨の形に近いという答えがありますのでそれなりに作りやすい部分です。
それとは逆に、筋肉の形が影響している部分は難しくなります。
実際には筋肉以外にも脂肪など、その人の体型により変化するため見極めるのが難しいということになります。
なので顔の造形に慣れていないときはまず痩せた顔や骨格がはっきりとした顔立ちの人を選んで作っていくと理解しやすくなります。
形のリアリティは骨格の凹凸を理解するところから

顔の造形は大きく分けて骨格、筋肉、皮膚の形を捉えながら作っていきます。
私がまだ未熟だった頃、骨格に対する意識は非常に低く、表面に見える形を追っていけば作れるものだと考えていました。
しかし、続けるにつれ行き詰まる時期が多くなり、そこで初めて骨格の重要性に気付くことが出来ました。
骨格を理解すると凹んでいる部分や突出している部分、どのような形が影響していて表面上に表れてきているのか解ってきます。
リアリティのある形とは何なのかを知るためにやはり骨格の理解は必要なものになります。
骨の上にいろんな組織が付いて覆われてしまいますがその中でもまだ骨の形が影響する部分が残っています。
骨格や筋肉を勉強する上で繋がっている方向や場所も大事ですが、まず骨の形が表面に表れているところから探していくことで造形のヒントにもなっていきます。
表面上から見ることと、内部から考えて見たときの違いに気が付くことでよりリアリティを追求することが出来てくるのです。

表面上だけではなく内部から・・・肉体と精神の関係性・・・見える世界と見えない世界・・・3・6・9。
造形を通してこの世界をコントロールする共通項が浮かび上がってきたような気が・・・しないでもないような気がします?
頭蓋骨の形を学べる手の平サイズの頭蓋骨模型を制作しました。
こちらのWebサイトから見て頂けます。➡︎ Goushi Arts 造形グッズ回廊
それでは、良い造形ライフを! ーGoushiー