キャラクター造形のペイントに必要な3種類の魅力要素

ペイント

造形というものは最終的に目の前に見える形として表現することになります。

 

その時仕上げとして何かしらの色付け、ペイント作業をして完成させていきます。

 

造形のクオリティーを担うポイントを最低限で挙げるとすると、

 

 

1、原型制作(Sculpt)

2、ペイント(Paint)

3、意味合い(concept)

 

 

この3つに絞れるかと思います。

 

 

今回はその2番目のペイント作業のことについて書いていきたいと思います。

 

 

 

造形と言っても様々なジャンルがありますが、ここでは皮膚感のあるキャラクター造形に関するペイントになります。

 

まずキャラクター造形のクオリティーを単純に上げるとするなら、

 

原型制作時の彫刻作業が肝心要にはなります。

 

次の工程のペイントではその原型制作で出来た形の良さをさらに飛躍させる役割です。

 

しかし原型制作がいくら上手なものでもペイント段階で失敗してしまうと一気にクオリティーは下がってしまいます。

 

粘土彫刻でもそうなのですが、

 

私は常に失敗の原因を理解するためにその工程を大まかにせず、

 

各要素を分解しながら作業の意味を確認しながら進めています。

 

 

特殊メイク、特殊造形で作るキャラクターには「リアリティ」ということが大事になってきますので、

 

どうすればリアルにペイントが進められるのかを3つのポイントに分けてご紹介したいと思います。

 

 

◉ペイントにおける大事な3つの魅力ポイント

 

1、ベースカラーの濃度

2、陰影の濃度

3、アクセントになる色

 

 

この3つに要素を分解して考えていくとペイント作業が分かり易いと思っています。

 

それでは一つづつ解説をしていきます。

 

 

1、ベースカラーの濃度 ➡︎ 色の深み

 

まずここで言うベースカラーとはそのキャラクターのメインとなる色を指します。

 

ペイント作業の初期に行うものがこのベースカラー濃度の調整です。

 

内容としては原色に近い色で色むらを付けながら何層ものレイヤーに重ねて目標の濃さにしていきます。

 

特殊メイク業界では色むらを付けるためにファンブラシ又は硬めの筆を使ってスパッタリングという手法で塗っていきます。

 

この色むらのレイヤーが重なれば重なるほどベースカラーに奥行きのある色味を出すことが出来ます。

 

 

 

ベースカラーの濃度ではキャラクターのメイン色の色の奥行き、深さを表現する工程になります。

 

皮膚感のある生物のほとんどは一色では表現出来ないほど複雑で奥行きのある色をしています。

 

なので色の深みを出すことはそのままリアリティ表現へと繋がり、魅力のある色合いを作ることが出来ます。

 

 

2、陰影の濃度 ➡︎ コントラスト

 

次は陰影の濃度になります。

 

(1〜3の工程は順番通りに行うわけではなく、単に3つの要素ということなのでペイントの順番ではありません。)

 

陰影はいわゆるシャドウ&ハイライトです。

 

私的にこの陰影の濃度は一番重要視していて、

 

陰影の表現でそのキャラクターの迫力や雰囲気が決まると考えています。

 

やはり初見はかなり大事になるのでそこに目を向けてもらうための重要な工程です。

 

単純にシャドウはベースカラーを濃くした色を入れることが一般的ですが、

 

それだけではなく別の色味のシャドウを入れることも効果的です。

 

 

 

陰影の濃度調整には一定以上離れた位置から作品を見て、

 

各場所の濃さのバランスを見極めていくことがとても大事になります。

 

陰影の濃度はそのキャラクターのコントラストを整える工程です。

 

そのコントラストが良く決まれば空間上で存在感が生まれ、それはリアリティーに繋がります。

 

 

リアリティーのペイントを目標とする場合この色の深みとコントラストは最低限無くてはならない工程なのです。

 

 

3、アクセントになる色 ➡︎ 演出効果

 

最後の3つ目はそのキャラクターの持つアクセントになる(目立つ)色の部分になります。

 

アクセントとなる色には目・鼻・口等の生物として自然に備わっている部分も大事なアクセントになります。

 

ただ今回の3つ目の要素では自然のアクセント色以外を指しています。

 

 

 

そのアクセント色を1〜2種類ほど加えるとキャラクターの魅力要素を増やすことが出来ます。

 

勿論キャラクターの目的によっては目立つ色が無い方が良い時もありますので、

 

アクセント色は必ず必要というわけではありません。

 

人間や人間に近い生物は元々付いているパーツ以外で、

 

アクセント色をあまり加えることが出来ないので、

 

ベースカラーと陰影の表現が特に大事になってきます。

 

 

 

キャラクター自体が一つの作品として押し出す際にはいくつか追加しておくと効果的であるということです。

 

それではアクセントになる色の参考例を挙げていきます。

 

◉ベースカラーが2種類以上ある

 

◉模様がある

 

◉強調されたハイライト&シャドウ

 

◉強調された血管の表現

 

◉色むらをあえて粗く残す部分を作り色の密度の調整

…etc

 

 

アクセント色を入れることは演出効果のようなものでそれによって魅力要素を作り出す工程となります。

 

 

 

ペイント見本の造形からこの3つの要素を分解して捉える

 

 

この3つの分解した要素は自身でペイントを行う時にも有効なのですが、

 

他の方の上手なペイントの見本を参考にするときにも有効になります。

 

 

まずその見本のベースカラーはどれくらいの色の深みになっているのか、

 

陰影のバランスはどのように調整されているのか、

 

そしてその見本が魅力的に見える要素、アクセントになっている部分はどこなのか、

 

 

この3つの要素を分解して探していくことでそのペイントテクニックの見せ方を割り出すことが出来ます。

 

 

 

 

ー分解要素例その1ー

 

クリーチャー

まず のベースカラーです。

 

ベースカラーは何色ものレイヤーが重なっているので色の深みが出ていて魅力ポイントとなります。

 

 

のシャドウ部分(シワの溝)には本来のシャドウ色ではなく赤や白を入れています。

 

陰影に色味を加えることで作品としての賑やかさを演出しています。

 

この辺りは好き嫌いが出るところではありますが魅力ポイントの一つになります。

 

 

そして のアクセント色には、

 

肌の模様、ベースカラーの追加(頭部と羽の間)、

羽の模様と陰影コントラストの掛け合い、

目、鼻、唇の奇抜な色味。

 

と魅力に感じられる多くのポイントが入っています。

(肌の模様は今見るとちょっと微妙なので抜いても良いです・・・)

 

 

勿論何でも入れれば良いというわけではありませんが・・・笑

 

 

 

ー分解要素例その2ー

ヴァンパイア

こちらはアクセント色をあまり使用せずにペイントをしたキャラクターです。

 

このペイントは目立ったアクセント色が無い代わりに、

 

主に陰影の濃度で魅力が伝わるように作っています

 

まず原型制作の段階から陰影で魅せるための形(シャドウの輪郭)を彫刻していました。

 

ペイントの際に全体の陰影の濃度と陰影の形に注意しながら丁寧に仕上げました。

 

魅力ポイントの多さが単純に魅力度が高くなるわけではない例としてみて頂ければと思います。

 

 

 

ー分解要素例その3ー

Amazing JIRO

こちらはうちの社長Amazing JIROの特殊メイク作品です。

 

私が思うにAmazing JIROはアクセント色の天才です。

 

そんな社長の作品の中から一つ、魅力要素を分解してご紹介していきます。

 

特殊メイク

まずは の茶色のベースカラーです。

 

色の深みだけを注視するとまだまだ奥行きを出すことは可能です。

 

しかしこちらは特殊メイクという限られた時間の中で仕上げていくものなので、

 

特殊メイクという範囲で考えると十分な色の魅力は出ています。

 

 

陰影の濃度は全体的にバランスが良いです。

 

それぞれの形の良さを十分に見て取れるので魅力ポイントに繋がっています。

 

 

最後にAmazing JIROの得意技であるアクセントです。

 

おでこには肌の模様があるので魅力ポイント。

 

茶色い肌とクチバシの間にもう一色追加することで単調さを回避していて魅力ポイント追加。

 

 

そして注目すべきは目元、頬骨付近のアクセントになっている白と黒のラインです。

 

何が注目かと言いますと、パッと目に入った時に反射的に格好良い!と感じたと思います。

 

そうです、Amazing JIROの天才的な技は、

 

人が反射的に格好良いと思える要素を数多く知っていることと、

 

その知識を組み合わせて新しい要素を作り出せることにあります。

 

 

この反射的に「良い!」と思えるものの中には、

なぜそれが良いと思えてしまうのか言葉では説明出来ないことがあります。

 

 

なのでここで大事なことは、

 

 

このAmazing JIROがペイントした 3’ のアクセントの色と形を、

自分の中にそのまま引き出しとしてコピーしておくことをお勧めします。

 

(おでこの肌の模様の形もコピーしたい良い見本です。)

 

 

 

いろんなアーティストの良い作品を見本として、

 

この3種類の魅力要素を抜き出し、たくさん引き出しとして持っておくことで、

 

自然に組み合わせる発想が出来たりするものなので、

 

見本を見る際には丁寧に観察していくことをおすすめしております。

 

 

 

 

以上がペイントを行う際に最低限考える3種類の魅力になるポイントでした。

 

 

念能力に当てはめると、

 

ベースカラーの濃度は作業的に強化形で、

 

陰影の濃度は存在感を調整するものなので、具現化系?で、

 

アクセント色は単純に入れれば良いというものではなく、

 

場所や形を意識しないといけないので変化系ですね。

 

 

変化系の技といえば、社長は得意そうなイメージしか出てこないですね〜。

 

 

ちなみに私は陰影を大事にしている強化系ですね・・・。

(単純作業はかなり得意です。)

 

 

すみません余談でした。

 

 

 

それでは皆さん、良い造形ライフを! ーGoushiー

 

ペイント

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