どんな技術でも練習を繰り返さないと上達は見込めないものですよね。 粘土彫刻 の場合は特にその反復が大事になってきます。
絵を描いたり彫刻をしたりする特殊な分野は一人前になるまでには数年または10年以上と、
長い道のりを経て徐々に習得していくものだと思います。
ゆえに習得が難しい技術ですので本当に好きでないと続けることが出来ない分野でもあると言えます。
私は特殊造形のスクール講師をしていることもあり、どうすればいかに早く技術習得が出来るのかをよく考えています。
現在所属している会社の後発を育てるためにも何かコツや分かりやすい事柄は無いか経験に沿って考えることが多いです。
そこでまず大事に思ったことは粘土彫刻作品を見ていくうちに、良く見えるものにはやはり何かしらのパターンがあるということです。
他の記事でもそのことについては触れていますが今回はより実践的な練習方法を書いていこうと思います。
目標の彫刻分野はリアリズムに近づける

目標の彫刻分野とは特殊メイク的な彫刻であったり、フィギュア的、ディズニーキャラクターのようなデフォルメに変換した形など様々なものがあります。
その中で特に上達させたい分野を絞って決めていきます。
いろんな分野を満遍なく覚えるのも良いのですが、
まずは1〜2種類に絞った方が集中的にレベルアップ出来るので得意分野を確立させやすいと思います。
このブログでは特殊造形をテーマにしていますので分野は「特殊造形・特殊メイク」的な系統で説明していきたいと思います。
特殊造形、特殊メイクの分野ではリアリティを追求した彫刻が多くなります。
人の顔ほどの大きさで作りますので肌のキメや小皺、毛穴なども彫刻で表現していくことが出来ます。
どの分野を選ぶのかは自由なのですがオススメはやはりリアリティのあるものが良いです。
リアリティのある粘土彫刻とはテクスチャー表現だけではなく、一般的には美術石膏のような顔の形を面で捉えたような形です。
稜線と言われる形の切り替わり(面の数)が多い彫刻を学ぶことによって彫刻は格段に上達します。
どんな粘土彫刻をする際にもこの稜線、面の数を知っていないと良いものを作ることが難しいです。
なので分野を選ぶというより初期段階としてはまずリアリティとはどういう形なのかを学ぶことが必然的になります。
良い作品とは何が良いと思えて魅力的なのかを知る

良い作品を作るためにはただがむしゃらに彫刻経験を重ねるのではなく、
世の中に存在するいろんな人が作った良い作品をどれだけ知っているのか、どれだけよく見てきているのかもかなり重要になってきます。
初期段階は、どういった形を作ると良いと感じるのかを知ることから始めていく必要があるのです。
この良い形を知らないで彫刻をし続けるということは暗闇でライトを点けずに歩いていくのと同じ行為になります。
自分自信の感覚だけで作ったものが良いものになる場合もあるかもしれませんが、
これは当選することのない宝くじのようなことなのでオススメ出来ません。
良いものとは一定数の共感性も必要なので、まずは良い作品の共通点から探っていくのが好ましいと思います。
最近よくメディアで見かけることが多くなりましたが、メディアアーティスト落合陽一さんの発言を聞いた時私も深く共感することがありました。
アートのジャンルはいろいろありますが「良い作品を作るにはまず良いものをとことん見ることから」と話されていました。
アートとは違う仕事も並行的に沢山行っているのにこのような芸術的な視点にも脱帽です・・・。
参考にする時の注意点

良い作品を参考にする時よく陥りやすい注意することがあります。
良いと思っている作品があるとしてその魅力のある部分は、
形の良さなのか、(稜線の数)
表面的なテクスチャーなのか、
色彩の良さなのか、
さらには写真加工でよく見えているだけなのか
を見極める必要があります。
特殊メイク・特殊造形的なことで考えると例えば作品の中にキャラクターがいるとします。
そのキャラクター(例:顔)だけを抜き出した時、良いと思えるのかどうかを判断していくということです。
粘土彫刻の場合は抜き出した部分だけでも魅力的に見えるのか、リアリティがあるのかどうか、
形の凹凸だけを見て判断していくと分かり易いと思います。
もちろん作品によってはそれぞれのものが組み合わさって良く見えるように完成するものもありますが、
練習のために参考にする場合はまた違った見方をしていくことになります。
絵を参考にする時もこの辺りは慎重に判断していきます。
私は「Magic The Gathering」というカードゲームイラストが好きでよく参考にしていました。
しかし、絵は稜線や奥行きが曖昧なため立体になると単調になったり、矛盾が出たりします。
それに絵は演出的な効果、描き方や、オーバーな表現も沢山あります。
ある程度技術が身に付いた後はその演出技術も学びに変えることが出来ますが、
初期段階では惑わされる結果になってしまいかねないのです。
もし現在粘土彫刻をしていてオリジナルのものを作ろうと悩んでいる時は一度、
先人が発見し皆んな共通に使っている良い形、ライン等を上手く取り入れられているのかチェックするのも良いかもしれません。
この初級編【1】ではまず良い作品をとにかく多く、とことん観察することから始めていきます。
ただ見るのではなく自分自身にとって感動した部分はどういう形をしているのか、
そういう形になっていると格好良く見える等、分析をしながら見ていきます。

世界中のスカルプター達が日々彫刻作品を次々に生み出しています。
SNSやウェブサイトにアップされたその作品はそのスカルプターが今まで培ってきた知識が沢山詰まった教科書でもあります。
特に初期段階では何をするにせよ見本となる教科書は必ず必要です。
しかし教科書は便利なものである代わりに、
しっかりとインプットするには面倒臭い感情が邪魔をし、流されてしまいがちになります。
良い形というのを知らずに彫刻の練習を行うことは本当に無謀な行為であると考えています。
それはすでに発見されている良い形をゼロからまた発見し直す行為になります。
なのでまず世の中にどれほど教科書が存在するのかを知り、出来るだけ多くを学んでいくことが大事です。
ある程度学んでいくうちに自身の個性と学んだものが掛け合わされ新しい教科書を生み出すことも可能になっていきます。
次回初級編【2】では粘土彫刻の実践でヒトの顔における必ず必要な形を紹介していきたいと思います。
それでは! ーGoushiー
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